第5章 契約
第71話 名前
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転生と言う、東洋の思想には当たり前に存在している思想に関する内容ですから。
おそらく彼女には、今のオルレアン家長女シャルロット姫として生を受けた以外の生命の記憶が、多少なりとも存在して居るのでしょう。
そして、その事を非科学的だと否定して仕舞うと、俺は、俺自身の存在。龍の血を引くハイブリッド・ヒューマンだと言う事や、東洋の魔法使い。駆け出しの仙人だと言う事の否定に繋がります。
例えそれが、今現在は実証が出来ない事で有ったとしても。
しかし、俺の方には、彼女の本名と言う記憶に思い当たる物もなければ、彼女に出会った時に、既視感に似た何かを覚えた事も有りませんでした。
ただ……。
「必ず、俺の手で記憶を取り戻した時。その時にタバサの本当の名前を呼ぶ」
彼女が俺を異世界から召喚出来た理由が二人の間に存在していた縁ならば、俺にも彼女に関する思い出が蘇える可能性も有って当然です。
そう考えて、非常に簡単に。しかし、強く実際の言葉にして答える俺。
その瞬間、繋がれたままと成って居る右手に、彼女の方から僅かな力が籠められた。
これは緊張。そして、俺の続く言葉の内容が彼女に予測出来たから。
そして、
「その時まで、タバサの前から消える……。死ぬ事はない。それは約束しよう」
☆★☆★☆
十月、 第四週、ダエグの曜日。
ガリア南方特有の穏やかな陽光が街を覆い、山から吹き下ろす風が熱波となって、晩秋と言っても良いこの季節とは思えないぐらいの温かな気温を作り上げて居た。
そう。本来ならば、地球世界のプロヴァンス地方のこの時期に吹く北風は厳しい冷たさを持つはずの寒風と成るはずなのですが、ここハルケギニア世界の風が吹き下ろして来る高山はすべて火焔山状態。其処から吹き下ろして来る季節風が、冬の寒さをもたらせる北風と成る訳は有りません。
小高い丘から見下ろした街。この緑あふれる丘には、他の地方の森で良く目にする背の高い樹木などは存在せず、低木で構成された灌木地や藪が海まで続き、海に面した平地に存在する光と風に溢れた港町からは……かなり強い陰の気配が発せられて居た。
人々が普段から遠ざけ、思い出す事さえせず、しかし、心の何処かでは畏れ続ける事象。
死の気配と言う物が。
この死の気配と言うのは当然……。この街も秋の始まりと共に発生した疫病がもたらせた物。この街の場合はペストを中心とした疫病が猛威を振るっている状態のようです。
そう。隣の軍港トゥーロンとは違い貿易。つまり、商業港として発展して来たこの街の場合は、海の向こうから輸入して来た毛皮などに付着して来ていたノミなどが媒介したペストが過去に何度も猛威を振る
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