第5章 契約
第71話 名前
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く、おそらく俺の申し出がジョゼフの予想通りの内容だった、と言う事なのでしょう。
そして、タバサの方はもっと判り易い。彼女が発して居るのは否定。俺が居もしない王子の影武者など演じる必要はない、と感じて居るのは間違いない雰囲気。
最後に、我関せずの姿勢を貫き続ける湖の乙女は……。
陰の気を発して居るのは間違い有りません。但し、この陰の気は少し質が違う。
これは……。まさか彼女が焼きもちのような感情を……。
そう考えながら、少し彼女に対する感知のレベルを上げる。
しかし、感知の精度を上げたトコロで、彼女から感じるのは、軽い嫉妬に似た感情で有る事が間違いない、と判っただけ。それ以上の事は一切判りませんでした。
いや、これも、そんなに奇異な事でも有りませんか。俺は、ジョゼフ王の目の前で頭を垂れ、片膝を床に着けた姿勢のまま、そう考え直した。
何故ならば、彼女の本質が水の精霊なら、その感情も不思議でも有りませんから。水の精霊とは基本的に愛が深い故に、昔から人間の男性との悲恋の物語の主人公と成る存在でも有りますからね。
人魚姫然り、メリジェーヌ然り。
それに普段のやり取りが感情を表に現さない、無機質で合理的な判断を優先させる彼女ですが、それでも心……。感情の部分が存在しない訳では有りません。
まして、その感情の部分が、前世の俺と絆を結んだ部分と成ったのでしょうから。
伝承上では、本来心を持たない水の精霊が心を得るのは、人間の男性から愛と言う形の心を与えられた時だけですから。
「王家から姫を攫う、……と言う事かな、英雄どのは」
かなりの陽の気。おそらく、笑いをかみ殺すような雰囲気を発しながら、ジョゼフはそう言った。
つまりこれは、俺の交換条件に対する答えが、否定ではないと言う事。
これで、最初の時に教えてくれたタバサの夢。晴耕雨読のような未来を選ぶ事も、再び可能と成ったと言う事です。
この部分と交換出来たのならば、僅かな回り道など大した問題ではないでしょう。
「それでは、次に合うのはヴェルサルティル宮殿。ルイ王子がマジャール侯の元より、王都に入る時になるのかな」
俺からの同意が得られた事で満足したのか、入って来た時と同じ唐突さで、踵を返して出て行くジョゼフ。
ただ、タバサの寝室内から一歩、廊下に出た瞬間に足を止め、
「その時には、二人仲良く入城するが良かろう」
振り返りもせずにそれだけの事を口にしてから、再び、軽い足音だけを残して去って行くガリアの王。
確かに現状のガリアを取り巻く状況から考えるのなら、王位継承権一位の人間を決めて置くのは悪い事ではないと思います。
それに、その王子と、現王家との間で色々と遺恨の有ったオルレアン家の姫が華燭の典を
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