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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第71話 名前
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い北風が更に勢いを増し、最早、嵐と言うべき様相を呈していた。
 これでは流石に、トリック・オア・トリートと言う訳には……。

 そんな、あまり役に立たないクダラナイ事を考えながら、何処を見るとは無しにぼんやりと風にガタガタと鳴る窓と、その窓に付随する少女姿の置物に視線を送って居た俺が……。

「なぁ、タバサ」

 寝台の脇に浅く腰を掛け、膝の上に開いた和漢の書に瞳を送って居た蒼い少女の方に振り向きながら話し掛けた。
 その瞬間、窓枠に腰を掛けた少女姿の置物の膝の上で、持参して来て居た和漢の書籍の新たなページが捲られた。
 何故か、その瞬間に、少し不満げな雰囲気を発しながら。

 そして俺の問い掛けに対して、下を向き続ける事に因って収まりの悪く成ったメガネのフレームを直しながら、視線を持ち上げるタバサ。
 そのメガネに魔法のランプの明かりが反射して、僅かな煌めきを俺の瞳に伝えた。
 何故かこちらは、少しの嬉しげな雰囲気を発しながら。

十一月(ギューフの月)、 第一週(フレイアの週)、虚無の曜日に、この世界のブリミル教では、何か特別な祭りのような物が開かれる事はないか?」

 少し、不謹慎な雰囲気は何処か遠くに放り出し、当初の疑問を口にする俺。

 尚、地球世界での十一月一日と言えば、諸聖人の祝日。カトリック教徒の多い国では、国民の祝日と成って居る日のはずです。
 そして、その前日の十月の末日と言えば、当然、ハロウィン。

 但し、これは、元々ケルトの民たちに取って十月末日とは一年の終わりの日。
 そして、十一月の最初の日とは、一年の始まりを示す日だったと言う事。
 つまり、もし、この世界に万聖節(諸聖人の祝日)が存在するのなら、その元と成った精霊への信仰と言う物が存在して居た可能性が出て来ると思いますから。

「ガリアでは敬虔王シャルル一世が、十一月(ギューフの月)、 第一週(フレイヤの週)、虚無の曜日を先祖の為に花を捧げる日と決めた」

 少しの空白の後、小さな声で囁くように答えてくれるタバサ。
 その言葉の中に感じる満ちた雰囲気。必要とされる人間の傍に居ると言うだけで、ここまで穏やかな感情に彼女は包まれて居られるのか、と感じる陽の雰囲気。

 そして、

 敬虔王シャルル一世。確か、以前にも聞いた事が有る名前。
 この名前は、ガリアのブリミル教への信仰に対するターニング・ポイントと成った可能性の有る人物だと言う事に成りますか。
 確か、本来の正統なる祖王からの血を引く義理の兄を弑逆して国を乗っ取った人物。

 それに……。
 俺は、それまで見つめていたタバサから、もう一人の少女の方に視線を移した。
 其処には窓枠に腰を下ろし、(マルセイユ)と秋の夜空を背景とした
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