第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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れたら、わたくし死んでしまいますわ……」
「姫殿下」
ルイズは顔を持ち上げた。
「幼い頃、泥だらけになりながら、一緒になって宮廷の中庭で蝶を追いかけましたわね」
はにかんだ顔で、ルイズが応える。
「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ポルトさまに叱られました」
「ええ、ええそうねルイズ。ふわふわのクリーム菓子を取り合って、つかみ合いになったこともあったわ。ふふっ、ケンカになると、いつもわたくしが負かされたわね。あなたに髪の毛をつかまれて、よく泣いたものね」
「いいえ、姫さまが勝利をお収めになったことも、一度ならずございました」
ルイズが懐かしそうに言った。
話しているうちに、昔を思い出して興奮してきたのか、アンリエッタの口調が段々と強くなっていく。
「あっ、思い出しましたわ。わたくしたちがほら、アミアンの包囲戦と呼んでいるあの一戦よ!」
「姫さまの寝室で、ドレスを奪い合ったときですね」
「そうよ、“宮廷ごっこ”の最中、どっちがお姫さま役をやるかで揉めて取っ組み合いになったわね! わたくしの一撃がうまい具合にルイズ・フランソワーズ、あなたのおなかに決まって」
「姫さまの御前でわたし、気絶いたしました」
それから2人はあははは、と顔を見合わせて笑い合う。
士郎はそれを苦笑いしながら見ている。
「ふふっ、その調子よルイズ。ああもうっ! わたくし懐かしくて、涙が出てしまうわ」
王女は深いため息をつくと、ベッドに腰かける。
アンリエッタの表情は、先ほどまでの嬉しげな様子は無く、深い憂いを含んだ表情だった。
「姫さま?」
ルイズは心配になってアンリエッタの顔を覗き込んだ。
「ルイズ……わたくし結婚するのよ……」
アンリエッタは窓の外の月を眺めて寂しそうに呟く。
その悲しげな声を聞いたルイズは、沈んだ声で言った。
「……おめでとうございます」
悲しげにルイズの祝辞の言葉を聞いていたアンリエッタだったが、先程からじっと黙ったまま壁に寄りかかり、こちらを見ている士郎に声をかけた。
「そう言えば、こちらの方はどなたですか?」
「えっ、ああっ。姫さま、ご紹介いたします、こちらはわたしの使い魔のシロウです」
「使い、魔?」
アンリエッタが訝しげな顔でルイズを見ると、ルイズはどこか誇らしげな顔をしてアンリエッタに士郎を紹介した。
「ええっ、その通りです。わたしの召喚した使い魔のエミヤシロウです」
「紹介に預かりました衛宮士郎です、プリンセス」
士郎はアンリエッタの前に膝まづく。
「人にしか見えませんが……」
「人です。姫さま」
呆然とした顔をしていたアンリエッタだったが、ふっと口元
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