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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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姫さまが? 笑っていたわよ」

 ルイズが驚き、枕から顔を上げ士郎を見上げると、士郎はルイズの頭に手を置き目を細める。
 
「ああ……そうだったな。きっと、俺の見間違いだ……」
「? 変なシロウ?」
 
 自分の頭の上に手を置いて笑う士郎を、不思議そうな顔で見上げたルイズは、士郎の目に悲しげな影を見つけ、声をかけようとした時、ドアがノックされた。

「俺が行く」

 ノックは規則正しく叩かれた。初めに長く二回、それから短く三回……。
 それに気付いたルイズは、はっと上げた顔をドアに向けた。
 急いでブラウスを身につけ、立ち上がる。そして、ドアに向かう士郎を押し留め、ドアを開けた。
 そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女。  
 辺りをうかがうように首を回した少女は、そそくさと部屋に入って来ると、後ろ手に扉を閉めた。

「も、もしかして……」
 
 ルイズは驚いたような声をあげた。
 頭巾をかぶった少女は、しっと言わんばかりに口元に指を立てた。それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から、魔法の杖を取り出すと軽く振る。
 そして、同時に短くルーンを呟くと、光の粉が部屋に舞った。
 
「……ディティクトマジック?」
 
 ルイズが疑問の声を上げると、それに応えるように士郎は言った。

「ここには誰も聞き耳も目も立てていませんよ……アンリエッタ王女殿下」
「「えっ!」」

 士郎の言葉に、ルイズだけでなく頭巾をかぶった少女も驚きの声をあげた。
 ルイズは慌てて少女を見ると、少女はかぶっていた頭巾をゆっくりと外す。
 現れたのは、士郎の言った通りのアンリエッタ王女であった。
 美しい顔立ちだけでなく、その身に神々しいばかりの高貴さを放っている。

「姫殿下!」
 
 ルイズが慌てて跪く。
 アンリエッタは涼しげな心地よい声で応える。

「おひさしぶりね。ルイズ・フランソワーズ」

 その光景を、士郎はどこか悲しげな目を細めて見ていた。

 ―――王族、か……。





 ルイズはかしこまった態度でアンリエッタに対応していると、アンリエッタは首を振りながらルイズに近づいた。

「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい! あなたとわたくしはお友達! お友達じゃないの!」
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
 
 ルイズは硬い緊張した声で言った。それを聞いたアンリエッタは、ルイズから離れて涙を滲ませた目で話しかける。

「ルイズ……そんなこと言わないでください。ここには誰もいないのですよ、枢機卿も母上も、欲の皮の被った宮廷貴族たちも……それなのに、あなたにまで、そんなよそよそしい態度を取ら
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