第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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ん、あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃないの」
キュルケが士郎の腕に、自分の腕を絡ませながらつまらなそうに呟く。
「ねえ、シロウはどっちが綺麗だと思う?」
キュルケが上目遣いに士郎に聞くと、反対の腕に自分の腕を絡ませたルイズがキュルケに噛み付いた。
「きゅ、キュルケッ! あんた何言ってんのよっ! 姫殿下に失礼よ! それといい加減にシロウから離れなさいっ!」
「何よ〜、別にいいじゃない。硬いわね〜」
しかし、士郎はそんな二人のやりとりを見ることなく、薔薇のような微笑みを周りに振りまくアンリエッタを見つめていた。
そんな士郎に気付いた二人が同時に頬を膨らませると、示し合わせたように絡ませていた腕の肉を同時に指で思いっきりつねり上げた。
「いっった!!」
士郎が驚いて下を向くと、そこにはどこかで見たことがあるような目つきをした、ルイズとキュルケがいた。
……これは、やばいな。
以前、時計塔のパーティーに、遠坂とルヴィアと一緒に行った際、ゲストとしてパーティーに現れたパーティードレスに着飾ったバゼットに見惚れていた士郎を見た遠坂たちの目つきに似ていると感じ、士郎は冷や汗が止まらない。
「シロウ? どこ見ていたのかしら? ねえ、あたしが近くにいるのにどこ見ているの?」
「ねえ、シロウ。あなたなんで姫さまに見とれているのかな? かな? かな?」
ルイズたちに両腕をつかまれているせいで逃げることも出来ず、士郎は青い空を見上げる。
「なんでさ……」
豪奢な馬車を守る近衛隊の内の一人に、羽帽子に長い口ひげが凛々しい、精悍な顔立ちの若い貴族であった。黒いマントの胸には、三つの魔法衛士隊の内の一つである、自らが率いる魔法衛士隊のグリフォンをかたどった刺繍が施されている。
男は、キュルケと仲良く士郎を責め立てているルイズを見て、誰にも聞かれ無いように小さく、暗く、深い声で呟いた。
「ルイズ……私の……“虚無”」
姫殿下が魔法学院に行幸したその日の夜……。
ルイズの部屋の中で、必死にルイズに言い訳をする士郎の姿があった。
「はあ……ルイズ、だから言ってるだろ、別に見とれていたわけではないと」
「でも、姫さまのことをずっと見てたじゃないっ」
枕を抱いて顔を横に向けて文句を言うルイズを見て、天井を仰いだ後、ため息を吐く。
「見てたのは確かだが……別に見とれていたわけでは無いぞ」
「……じゃあ、なんであんなにじっと見てたの?」
ルイズが枕を抱きしめながら、上目遣いで士郎を見上げると、士郎は悲しそうな顔をしていた。
「……泣いているように見えて、な」
「えっ? 泣いて?
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