第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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見えぬ“風”は、見えずとも諸君らを守る盾となり、必要とあらば敵を吹き飛ばす矛となるだろう。そしてもう一つ、“風”が最強たる所以は…」
ギトーは杖を立てた。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
低く、呪文を詠唱する。しかしそのとき……、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のコルベールが現れた。
彼は珍妙ななりをしていた。頭に馬鹿でかい縦ロールの金髪のカツラをのっけている。
みると、ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍やらが踊っている。
「ミスタ?」
ギトーが眉をひそめた。
「あややや、ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」
「授業中です」
コルベールをにらんで、ギトーが短く言った。
「おっほん、今日の授業はすべて中止であります」
コルベールは重々しい調子で告げた。教室中から歓声が上がる。その歓声を抑えるように両手を振りながら、ミスタ。コルベールは言葉を続けた。
「えー、皆さんにお知らせですぞ」
もったいぶった調子で、コルベールはのけぞった。のけぞった拍子に、頭にのっけた馬鹿でかいカツラがとれて、床に落っこちた。
すると、一番前に座ったタバサが、コルベールのツルツルに禿げ上がった頭を指差して、ぼつんと呟いた。
「滑りやすい」
教室が爆笑に包まれた。キュルケが笑いながらタバサの肩をぽんぽんと叩いて言う。
「あなた、たまに口を開くと、言うわね」
コルベールは顔を真っ赤にさせると、大きな声で怒鳴った。
「ええい! 黙りなさいこの小僧どもがっ! こんな時貴族は、下を向いてこっそり笑うものですぞ! これでは王室に教育の成果が疑われる!」
その剣幕に、教室中がおとなしくなった。
しかし、怒鳴り付けたコルベールの頭に、教室の窓から差した光が当たり、キラリと光るのをみて、再びタバサポツリと。
「……光りやすい」
「「「「「ごぷふっっ!!」」」」」
再び爆笑に包まれた教室を見て、コルベールは大声で怒鳴る。
「ええいっ! 静まれいっ! 静まれいぃっ! 恐れ多くも先の国王が忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされるのですぞっ!」
教室がざわめいた。
「したがって、お出迎えのため、今から全力を挙げて、歓迎式典の準備を行いますぞ。そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること」
生徒たちは緊張した面持ちになると一斉に頷いた。ミスタ・コルベールはうんうんと重々しげに頷くと、目を見張き高らかに言い放つ。
「諸君が立派な貴族に成長したことを、姫殿下にお見せする絶好の機会ですぞ! 御覚えがよ
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