第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
「残念ながらそうではない」
ギトーは腰に差した杖を引き抜くと、言い放った。
「疑うのならば、この私にきみの得意な“火”の魔法をぶつけてきたまえ」
キュルケはぎょっとした。いきなり、この先生は何を言うのだろうと思う、が。
「どうしたね? きみは確か、“火”系統が得意なのではなかったかな?」
挑発するようなギトーの言葉に、キュルケの目つきが変わった。
「火傷じゃすみませんわよ?」
キュルケは目を細め、硬い声で告げる。
「かまわん。本気できたまえ。その、有名なツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならな」
キュルケの顔からいつもの小馬鹿にしたような笑みが消えた。
胸の谷間から杖を抜くと、炎のような赤毛が、ぶわっと熱した様にざわめき、逆立つ。
それを見た生徒たちが慌てて机の下に隠れ始める。
キュルケが杖を振り、杖の先に直径一メートルほどの大きさになった火球を、ギトーめがけ振りかぶり、勢い良く放つ。唸りをあげて自分めがけて飛んでくる炎の玉を避ける仕草も見せずに、ギトーは腰に差した杖を引き抜いた。そして、そのまま剣を振るようにして薙ぎ払う。
烈風が舞い上がる。
一瞬にして炎の玉は掻き消え、烈風はそのまま、その向こうにいたキュルケを吹き飛ばそうとした。
しかし、風がキュルケを吹き飛ばす前に、士郎がキュルケの前に現れ、腰から抜いたデルフリンガーで風を切り裂いた。
「なっ」
「シロウっ!」
「無事かキュルケ」
士郎が振りむいた先には、頬を染め、潤んだ瞳で士郎を見上げるキュルケ。
「……ええ。ありがとうシロウ」
「ぐっ……」
二人っきりの世界ができ、完全に蚊帳の外に置かれてしまったギトーだが、唸り声を上げると咳を一つし、なにごとも無かったかのように話を続けた。
「くぬぬぬ……、ごほんっ……諸君、“風”が最強たる所以を教えようか、簡単だ。“風”はすべてを薙ぎ払う、“火”も、“水”も、“土”も、“風”の前では立つことすらできない。残念ながら試したことはないが、“虚無”さえ吹き飛ばすだろう。それが“風”だ」
幸せそうに士郎を見つめていたキュルケだったが、ギトーの方を向き直ると、意地悪く笑った。
「シロウは立っていますが?」
「ぐっ!」
キュルケに指摘されたギトーは、苦虫を噛み潰したかのような顔になる。
「そ、それは……、あ、あれは私が直前に気付いて、当たる前に消したのだよ」
「先生も驚いていましたけど……」
キュルケだけでなく、教室中の生徒たちから白い目で見られたギトーだったが、大きく咳払いをすると話を続けた。
「ゴホンッ! 目に
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