第三十七話 少年期S
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なんですよ」
「苦手で終わっていたら、いざという時に困るぞ。まぁ、諦めずに考えを停止させなかったことはいいことだと思うがな」
そう言ってレティ先輩は、くしゃくしゃと俺の頭を掻き撫でた。先輩は時々こうやって楽しそうに笑うので、俺は髪がぐしゃぐしゃになるのを強く言うことができない。初めてできた親しい後輩を、おもちゃにしながらもかわいがっているという感じだろうか。……なんか自分で言っていて照れるんだが。
「一般の人たちも来るが、一番の理由は公務員や民間企業の営業の一環として、来られる方たちがいることだな」
「公務員って管理局の人たちとかですか? 人材不足だってよくニュースで言っているのに、わざわざ子どもの運動会に…………青田買い?」
「よくそんな言葉を知っているな。もちろん管理局に就職するには、成績や訓練校での実習も当然必要だが、事前にある程度目ぼしい当たりをつけておくことができる。訓練では埋もれてしまうが、本番に強いという実践型もいる。だから管理局の訓練校の教員だったりが、どんな若者がいるのか、原石があるのかを見に来ることがあるというわけだ」
うわぁ、大人の世界だー。少なくとも初等部1年生の俺としては、わーい運動会だー! 程度の認識ではしゃぎたかったんですけどねー。人材不足の切実さと、就職を有利に進めようとする根性を、小中学生の運動会にさらりと組み込まないでー。
「初等部の内は飛び級の者でない限り、あまり関係がないことだからな。そんなに身構える必要はないぞ。今言ったことも中等部での暗黙の了解のようなものだから、普通の児童は知らないものだ」
「それなら、知らないままが良かったです。……あれ、それならなんで先輩は知っていたんですか? レティ先輩は初等部ですよね」
来年は中等部に入るから知っていたのだろうか、と疑問に思っていた俺に向け、彼女は小さく笑みを浮かべた。メガネのブリッジをカチャリと指で押し上げ、スラリとした体型に芯が入ったかのような真っ直ぐな姿勢。こういうゴクリッ、と唾を飲み込こんでしまいそうになる人を、カリスマがある人っていうんだろうか。俺も同じように静かに先輩の言葉を待った。
「何、大したことじゃないさ。……ただみんなが知らないことを知っているというのは、かっこよくないか?」
「…………」
俺、なんとなくこの先輩のことがわかったような気がした。
******
「ん? 少年E、それなんの魔方陣だ?」
「召喚魔方陣」
「そういえば、リトスってそっち関係の魔法の選択授業を受けていたものね。でもあれって、中等部で習う魔法だよ? 難しくないかな」
午前の選択授業も終わり、お昼休みの真っ最中。少年Eが机の上に広げていた本があったので、見せてもらうと初めて見る形の魔方陣
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