第三十七話 少年期S
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ため魔法を使う際は、術者の精神が大きく影響する。イメージが大きければ、込める思いが強くなれば、その分だけ魔法は答えてしまうのだ。
「……あ」
「えっ?」
少年Eの珍しく間の抜けた声に全員が振り返る。そこにはまた何か召喚してしまったのか、白い光が溢れていた。今度は何が召喚されたのかと見ていると、ふと影が落ちる。徐々に霞が晴れるようにして、影となったその姿が俺たちの目に映った。
2メートル以上は確実にありそうな屈強な巨体。俺たちと同じように2本足で堂々と佇む姿。ただし決定的に違うのはその頭部。頭から生えた2本の大きなツノは天に昇るように荒々しく、何よりもその顔は人ではなく牡牛であった。
うわぁ、ファンタジーでお馴染みのお方じゃないですかー、なんて呆然と考察してしまったぐらいに俺は目の前のことに衝撃を受けていた。……これ、確かミノタウロスって言うんだっけ?
静まり返った空気の中、ミノタウロスはギロリ、とその獰猛な目を俺たちへと向けてくる。蛇に睨まれたカエルの様に身体が動かなかった俺は、それをただジッと見つめることしかできなかった。子ども1人ぐらい簡単に飲み込んでしまいそうな、そんな大きさの口を悠然と開き、ミノタウロスは声を張り上げた。
『ブモモォォォッッーーー、ブホォッ!?』
「うわぁァァァーーー!!」
突然の事態に恐慌状態になってしまった少年Aが、すごい速度で手に持っていたエビをミノタウロスに向かってブン投げていた。今一瞬魔方陣が見えたような気がしたけど……、というか投げたエビがミノタウロスの目に直撃したみたいでボロボロ泣いている!?
だけど少年Aのおかげで硬直から動ける。今ここで動かなければ、俺たちは餌食にされてしまうかもしれない! 俺は足の下にある召喚されたキャベツに触れる。ずっしりとした重さを手に感じながら、すぐにレアスキルを発動した。キャベツはミノタウロスの真上へと転移し、そして重力に沿って降下。そのままやつの脳天を直撃させた。
『ブ、ブォォォォーーー!!』
結果、相手は頭を抱えてうずくまって、さらに大泣きを始めてしまった。……あれ、なんでこんなに罪悪感を感じるんだろう。
「あぁー、うん。とりあえずみんな落ち着きましょうねー」
「せ、先生! 逆になんでそんなに落ち着いていられるんですか!?」
「えっとね、アレックス君。あの牛さんは怖い顔で大きい身体をしているけど、人を襲うようなことはないの。草食で話の分かる牛さんなのよ。先生も若干信じられないんだけどね」
『ブモォッ!?』
そんな先生殿!? という感じでさらに泣き崩れる……えーと、ミノさん。先生がすごく遠い目をしながら、とりあえず保護団体の方に引き取り連絡を入れなきゃ、と乾いた笑みを浮か
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