第一部 剣技
Silica's episode 1日だけの
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うしたの?」
少年が言った。その頬は僅かに赤い。
珪子は、自分と少年が至近距離で見つめ合っていることに今更ながら気がついた。
「ごっ、ごめんなさい!」
珪子は慌てて飛び退いた。少年は「謝ることないよ」と微笑む。
「ところで、すっごい走ってたみたいだけど……どうかしたの?」
「えっ?」
珪子に言い寄る男は多い。珪子は、その人達を極力遠ざけてきた。
──しかし。
目の前にいる、見知らぬ少年に、何故だか安心感を覚えた。
普段ならなにか言い訳をしてすぐさま逃げていたが、この少年は大丈夫な気がする。
「えっと……相棒のピナ──フェザードリラが行方不明で……」
「相棒のフェザードリラ……君はビーストテイマーかい?」
「……え? あっ……はい」
あれおかしいな、と珪子は思った。
中等部での珪子はアイドル的存在で、知らない者などいないと思っていた。?ビーストテイマー?と聞けば、誰でも珪子の顔を思い浮かべるような……。
しかし、少年は珪子のことなど全く知らないようだった。
「俺も一緒に捜すよ。どうせ暇だったし」
「え、でも授業が」
2年生は今、自由活動の時間だが、3年生は絶賛授業中のはずだ──と言うと、今少年が教室でなくここにいることが既にアウトなのだが。
「気にしなくていいよ。さぁ、行こう」
「え、えぇ!?」
少年はニコリと笑った。
珪子はとりあえず名乗ることにした。いつもならほとんど必要ないのだが、この少年はどうやら珪子のことを知らない様子だったためである。
「あの、あたし……綾野珪子、2年です。みんなにはシリカって呼ばれてます」
少年は言う。
「じゃあ、シリカさん。俺は……キリトって呼んでくれ。みんなそう呼ぶから」
「は、はい。あ、あたしのことは呼び捨てで構いませんよ!」
自分が言った言葉なのに、珪子はなんだか恥ずかしくなってきた。
「ならそうさせてもらうよ。じゃあ行こうか、シリカ」
キリトと言った少年に『シリカ』と呼ばれると、顔中──いや、全身が熱くなるような感覚があった。
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「見あたらないな……」
「……本当に、愛想尽かされちゃったのかな……」
珪子は段々不安になってきた。
キリトは珪子の頭に、掌をポンと置いて優しく微笑んだ。
「そんなことないよ。もうちょっと捜そう」
珪子は最初、出会ったばかりのキリトに、兄や父の姿を重ねていた。珪子は一人っ子だけれど、兄がいたら、きっとこんな感じだろう──と。
しかし、今はなんだか違う気がする。もっと遠くて、近く
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