第二章 風のアルビオン
プロローグ 夢
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ではなく獣そのもの。
それが十体。
人では到底考えられない獣じみた動きで、その人の姿をしたナニカは士郎に襲いかかっていた。
普通に考えれば到底士郎に勝ち目は皆無。
無残に食いちぎられ屍を晒す姿を容易に想像できる―――しかし、
す、凄い―――っ!?
衛宮士郎はその上をいく。
まさに目にも止まらない動きで襲いかかるナニカを、士郎は両手に持った白と黒の剣を振るい次々と切り裂いていく。淀みないその動きは、離れて見ていても追うことはおろか、残像すらその目に映すことは出来ないでいた。
何て―――強さっ!
息を呑むルイズの視界が歪み、また別光景が現れる。そこでは士郎がまた別の何かと戦っていた。次々に切り替わる光景。その全てにおいて、士郎は戦っていた。
絵物語のような現実味が感じられない戦いを目にしたルイズは、まるで何かの劇でも観戦しているかのように興奮していた。
その後も、ルイズの見る光景は次々と変わっていき―――その全てに士郎がいた。
ある時は燃え盛る炎の中から子供を助け出し、またある時は誰かを庇いながら戦い……どれもこれも誰かのために……。
しかし、物語の語られる“正義の騎士”のような士郎の姿に、興奮したルイズが凄い凄いと何度も連呼していた口が―――唐突に固まった。
―――すごいすごい! シロウは本と―――?
赤
朱
紅
赫
真っ赤だった。
焼けた空の下、大地も、空気さえ赤く染まったその中心に、一人の男が蹲っている。
そこは戦場だった。
大量の武器? なのだろうか。ルイズが知っている銃に似たものがあちらこちらに散らばっていた。その他にも、見たことのない大きな金属の箱のようなものが煙を吐いて数多く転がっている。それらが何であるか、ルイズには分からなかったが、そこが戦場であることだけは確信していた。何故ならば……
あ……。
そこには死が溢れていた。
人が死んでいる。
手がないもの、足がないもの、顎の上だけがなくなっているもの、上半身が吹き飛ばされ、大きなミミズのような腸が飛び出しているもの、逆に下半身だけがないものもある。
死に満ちた光景を、只々ルイズは呆然と見ているだけ。
血の匂いさえ感じられるようでありながら、現実味がない、そんな矛盾する光景を……。
なに……こ、れ……
理解出来ない光景を、ただ呆然と視界に収めていたルイズの耳に―――微かな声が届いた。
それは―――
「また……救えなかった……一体、どうすれば良かったんだ……どうすれば……救えたんだ……俺が……弱かったからか……強ければ……救えたのか」
―――えっ? シ、ロウ?
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