第二章 風のアルビオン
プロローグ 夢
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なところにいたのか」
赤い外套を身に纏い、現れた人影は自身が召喚した使い魔。
―――エミヤシロウ。
ここにいるはずのない使い魔に、幼いルイズは頬を膨らまし、不満気な顔を向ける。
「……なんで来たのよ」
「心配だからな」
不満気な様子のルイズに苦笑いを向け、士郎は手をそっと差し伸べる。
「さあ、行こうルイズ。みんなが待ってる」
「……私を待っている人なんか」
士郎の手を見つめながら、ルイズは手を取ることを躊躇している。
『待っている人なんか』と躊躇いながらも、自分の手から視線を動かさないルイズに、士郎は苦笑いを優しい微笑に変えた。
「キュルケもタバサも、オールド・オスマンも、コルベール先生もな」
「ふんっ、キュルケは余計だけどね」
士郎の言葉に、一度目を閉じたルイズは、目を開くと鼻を鳴らしながら士郎の手に向かって手を伸ばしかけたが、士郎の手に触れる直前、頬を染め士郎の顔を見上げた。
「その……ね。シロウは?」
「ん?」
士郎が不思議な顔をして、ルイズを見つめると、ルイズの顔はますます真っ赤になった。
「だからっ! シロウはどうなのって聴いてるのよ!」
真っ赤にながら怒鳴るように言うルイズに、士郎は思わず吹き出すのを必死に堪えたが。
「ぷっ、っく。いや、すまんすまん。……もちろんだルイズ、俺も待っていたよ」
吹き出すのを堪えられなかった士郎は、あまりの恥ずかしさに目を涙で潤ませ、頬まで膨らませているルイズに謝りながら手を差し出す。顔をふくれっ面にしたルイズは、怒りながらも、どこか嬉しげに手を伸ばし、士郎の手に触れ……
―――えっ……何、これ……?
そこは、森に囲まれた何処にでもあるような小さな村に見えた。その中心には、簡易的な寝床なのか、藁が敷かれその上に村人だろうか? 十数人もの人が倒れ込んでうめき声を上げていた。そんな苦しみの声を上げる人達の中を、一人の若い男が走り回り必死に看病をしていた。
「―――っくそ! 一体どうなっている! 進行が早すぎるっ!? このままでは間に合わないぞっ」
え? もしかして、シロウ?
たった一人で一つの村の住人の看病をするという無茶をしている男が、自分の使い魔であることに気付いたルイズは、一体何が起きているのかと意識を集中させると同時に、視界が歪み始め目に映る光景が変化を始めた。
歪んでいた像の焦点が合い、鮮明になった視界の中現れたのは、士郎がナニカと戦っている姿だった。
―――ひ、と?
一見して人間の姿をしているソレを、しかし、ルイズは人間とは感じなかった。
紅い瞳を爛々と輝かせ、唾液に濡れた異様に鋭い犬歯をむき出しに吠え立てる姿は、人
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