ヨツンヘイム珍道中
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「遅かったな」
「待ちくたびれたぜ」
階段の下部、直角にカーブしている場所には壁に埋まっている二人の姿があった
キリトは頭が。クラインは下半身が。それぞれ壁に埋まっている。ちなみにユイは左半分
どの向きから壁に衝突したかが一目瞭然だな
「さっさと壁から身体を抜いたらどうだ?」
「それもそうだな」
「うぅ……ひどいめに合いました……」
それぞれ数秒くらい藻掻いた後、ズボッという音とともに身体が抜け、地面に落下
キリトよりも上に刺さっていたクラインがキリトの上となり、二人ともカエルの潰れたような声を出した
「「ぐぇっ」」
「漫才は置いといて……ここからどうするんだ?」
剥き出しの顔を冷気が叩く
氷の結晶が舞い踊り、キラキラと光る巨大な氷柱がいくつも天井から吊り下がっている
その巨大な氷柱の間を縫うように絡み付く巨大な世界樹の根が抱えているのは一際巨大な氷塊
そう、ここが北欧神話で有名な三世界の一つ。アルウ゛ヘイム、ムスペルヘイムに並ぶヨトゥンヘイムの姿だ
俺達のいる階段はあと十数メートルほどあるものの、そこから先はなにもない
有名な某RPGの五番に存在する塔のように見えない通路が存在するとは思えない
「とりあえず……」
アスナが右手をかかげ、バフを唱えると全員の身体を青い光が包み込み、肌を刺すような冷気が和らいだ
アイコンを見ると凍結耐性を上昇させるバフらしい
「じゃあ、呼ぶね?」
そう言うとリーファは親指と人差し指を軽く曲げ、口の中に軽く入れると鋭く息を吹いた
ピーという音が広大な空間に響き渡ると、どこからともなく羽ばたく音が聞こえてくる
くぉぉーんという鳴き声と共に姿を現したのは異形の生物。くらげに翼をつけて象のような姿をした種族的に言えば邪神と呼ばれるヨトゥンヘイムを闊歩するエネミーの一柱だ
「トンキーさーーーん!」
いつの間にかアスナの肩へ移動していたらしいユイがその小さな身体で精一杯大きく手を振りながら呼び掛けると飛翔する象くらげは再び応えるように鳴いた
「……なんでそんなファンシーな名前なんだ?」
「……うん、今考えるとさすがにないかなって思う」
「くぉぉぉぉん!?」
名付け親であるらしいリーファに名前を否定され、なにやら驚愕の色の混じった声で鳴くトンキー
人の言葉が通じるのか?
やがて俺達のいる足場のすぐそばにホバリングをしながら停止すると、その大きさにクラインが一歩後ろに下がる
俺はまあ、正直怖くない
シノンは後ろには下がらなかったが、俺の服を掴んで離さない
微妙にカタカタ震えていることを鑑みるとインパクトに気圧されているのだろう
ユウキはというと……うん、目を輝かせている
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