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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
それぞれのマスターたち
選択の意思
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めちゃくちゃ痛い」

 他に方法がなかったのだろう。
 迫る牙の飛翔を止めたその腕には、鉄杭が貫通している。
 そんな自分の状態を苦悶の声を上げるでもなく、士郎はあくまで冷静に告げた。

 敵の攻撃に気づいたのにも驚きだが、取り乱さずに落ち着いているのにも驚いた。

 自身の芯に一本、鋼の覚悟を通しているのだろう。
 常に痛みを伴う心構えをしているから、いざというときの行動がブレることがない。

 魔術師として、男として、強い心を持っているということだ。

(ライダーは外か? なら指向探査で居場所を見つけて────)
「っ!」
「え、おい士郎!? 馬鹿待て、先にライダーの探知……いや、せめて腕を治してから…………!」

 何を思ったか、非常口から外へと駆け出していく。
 こちらの制止の声など聞く耳持たず、腕には鉄杭を引きずったままで。

 腕の治療もそうだが、あの鉄杭から伸びる鎖はその持ち主へと繋がっているはずだ。
 今の士郎は糸に絡められた獲物に等しく、ライダーがその気になれば一瞬で片が付く。

 魔術刻印から探査魔術を奔らせる。
 非常口から鉄杭が飛んできた方向に索敵を掛ける。

 士郎の魔力を探知…………士郎から逃げるように動き回っているのがライダーか。

 相変わらずライダーのマスターの存在は確認できない。
 相当に隠れるのが巧いのか、ライダーには単独行動させているのか。

 一先ず、この場での危険はない。

「おい凛、一人でも大丈夫か?」
「え、う、うん」
「一応周囲には気を配っておけ。まだトラップがあるかもしれん」
「どうするつもりなの?」
「アイツほっとくわけにもいかんだろ。正直助ける義理もないが、ライダーは俺の獲物だしな」

 あの夜の借りは返さねばならない。
 それに売られた喧嘩は最後まで買い取ってやらなきゃ気が済まない。

 どういうつもりでこんな回りくどい真似をしているのか。
 ただこうして翻弄していたぶることを目的としているかのような行動。

 もしかしたらライダーのマスターは俺の、もしくは俺たちの知り合いなのではないか?

 俺や士郎のようなケースもある。
 マスターを襲わせているにしては不手際が過ぎるし、たまたまマスターに選ばれた奴が俺たちに対して固執する何かがあるのなら、それは顔見知りである可能性が高い。

 そしてライダーのマスターが魔術師であるかどうかも疑問だ。
 これまで何度かライダーとは接触しているが、マスターの方は姿を見るどころか存在を確認すら出来ていない。
 それはこちらが敵のマスターを魔術師であると疑わずにいるからであり、マスターである=魔力の気配があるという先入観のせいだ。

 もし相手がただの人間であった
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