第二十九話 暴走
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遼は静かに目を覚ます。
となりにはあの後二人は忍に契約したことを伝え、そのまま寝てしまったすずかがいる。
「…………」
遼はすずかを起こさないようにそっとベッドから降りる。
彼女が起きたのには理由があった。
それはほんの些細な違和感。
金属同士がぶつかる音が、僅かながらも彼女の耳に入ったからだった。
彼女は窓から庭を見下ろす。
そこにはボロボロに傷ついた月村家のメイド、ノエルの姿があった。
遼は視線を上げ、相手を見る。
それは見たこともない高校生くらいの青年だった。
彼は怪しい笑みを浮かべ、ノエルを見下している。
遼は確信する、あれは、敵だと。
私から、大切な人を奪う、敵だと。
彼女は愛剣・ノートゥングを展開する。
眠気も一瞬で覚めるほど、彼女は怒っていた。
いつもの遼なら冷静に対処しただろう。
けれど今日は違った。
すずかの正体や思いを知って、より大切になった。
そして今、すずかを悲しませる人間が目の前にいる。
彼女が怒るにはそれで十分だった。
彼女は窓を開け、二階から飛び降りる。
着地の際の音で、二人が遼に気がつく。
「遼お嬢様!?」「何だ、まだ敵がいたのか」
遼はゆっくりとノエルの前に出る。
「ねえ、あなたがやったの?」
その声にはいつもの静かさはなく、目の前の相手への怒りが露わになっていた。
「ああ、そうだが、何か?」
当然とも言いたげに、彼は返す。
「そう」
遼は剣を抜き、構える。
「じゃあ、殺さなくちゃね」
その返事に、彼は笑う。
「あまり強い言葉を使うと、弱く見えるぞ」
彼は左手に握っていた刀を遼に見せつける。
「さあ出番だ、鏡花水月」
side ノエル
まただ。
目の前の侵入者の数が急激に増える。
その全てから本物の気配を感じ、本当に増えたのかと錯覚するほど。
鏡花水月。
彼の異質な力。
彼自身の言葉によると、能力は完全催眠。
その刀を見せられた瞬間から術中にハマり、自力で解除することは不可能。
(恐く、遼お嬢様も同じような幻覚を見せられているはず、なら勝ち目はない)
私もそうだった。
様々な方向からくる斬撃。
偽物と思っていたほうが本物で、本物と思っていたほうが偽物。
そんな幻覚に翻弄され、彼に傷一つ付けることなく、私は負けた。
「はる、さま、逃げ……」
そのことを伝えようとしても、彼に受けたダメージが大
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