第九章 双月の舞踏会
第五話 変わる日常
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ーシュに事情を聞いてみると、どうやら事前にアンリエッタから撤退戦の事実を聞かされていたアルビオン戦役に参加していた生徒たちが、御礼を言いたいと集まったとのことであった。
「いや〜やっぱりシロウは生きてたね。ま、死んだなんて話し最初からぼくは信じていなかったけどね」
「へぇ〜、じゃあこの前部屋に込もって何してたのよ」
ギーシュやモンモランシーたちが無事を祝いながら何時ものやり取りをするのを見た士郎は、何となく自分を囲む者たちをぐるりと見回す。
「コルベール先生の姿が見えないが、研究室にいるのか?」
自分を取り囲む人の中にコルベールの姿がないことに気付いた士郎が、先程から右腕に身体を巻き付かせるように抱きつくキュルケに尋ねる。士郎の視線を受けたキュルケは一瞬不機嫌な色を顔に浮かばせると、集まった生徒たちをチラリと見回した。
「コルベール先生なら今頃わたしの実家で研究の続きでもしているんじゃないの?」
「キュルケの実家? どういうことだ?」
予想外の答えに、士郎が首を傾げると、キュルケはふんっ、と鼻を鳴らすとジロリと強い視線を生徒たちに向けた。
「ちょっと先生の過去のことで生徒の親が騒ぎ立てたのよ。それで冷却期間としてオールド・オスマンが休みを取らせたってわけ。で、身寄りのない先生が行くところがないって困ってたから……それで、今まで失礼な態度を取ってたってことでお詫びにわたしの実家に招待したのよ。ああ、そうそう。この間手紙が来たんだけど、わたしの父と仲良くなって研究の後援を受けることになったって書いてあったから、結構楽しんでるんじゃないかしら」
「そうか……ん、ありがとうなキュルケ」
「な、べ、別にシロウからお礼を言われるようなことじゃ……」
士郎がキュルケの目をまっすぐ見ながらお礼を口にする。
キュルケは赤く染まった頬を隠すように、士郎の腕に顔を押し付けると小さく声を上げた。
「しかし、先生の過去か……」
戦争の最中、魔法学院がアルビオンからの襲撃を受けたことを、士郎は事前にロングビルから聞いていた。そしてその際コルベールの過去が、魔法学院に残っていた生徒と教師全員にバレてしまったことも。
コルベールの過去は知れば知るほど多くの人から非難を受けるようなものであり、そのことで問題が起こるのではと士郎は恐れていた。だが、それもそこまで心配しなくてもいいかもしれないなと、士郎は周囲を見渡して思う。
キュルケの非難がこもった視線を受けた生徒たちの中に、悲しそうに目を伏せる生徒を多く見かけたからだ。
少なくとも、生徒たち全員がコルベールを嫌悪していないということが分かり、士郎は小さく安堵の息を吐いた。
コルベール先生のことは今度でいいか、それよりも今は|コレ《・
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