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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
第五話 変わる日常
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間に合わなかったようね。で、どう? ま、この四人の様子を見れば何となく予想はつくけど、結局シロウに一?でも当てられた?」
「いや、まだまだ当分先になりそうだな」
「そっか。じゃ、まだまだシロウが率いる近衛隊は当分シロウだけってことか。って、あ、おはようございます」

 親しげに話しかけながら近づいてくるメイドは、士郎の傍に女性がいることに気付くと、肩に担ぐようにして持っていた籠を下ろし深々と頭を下げた。

「おはよう。わたしもシロウさんの訓練を見に来たんだけど見逃してしまったの。授業に差し障りがありそうだったら止めようと思ったんだけど、来た時には手遅れだったわ」
「え〜と……あはは、そ、そうみたいですね」

 挨拶をされた女性は、口元に微笑みを浮かべ小さく挨拶を返すと、そのまま誘導するように未だ動く様子を見せない四つの塊に視線を向ける。女性の視線に導かれるように、メイドが視線を地面の上から先程からピクリとも動かないギーシュたちに向けるとコクコクと首を縦に振る。
 メイドは女性の視線から逃げるように、士郎に顔を向けると苦笑を浮かべた。

「噂には聞いてたけど、かなり厳しいみたいね」
「命に関わることだからな、厳しくもなるさ。っと、それよりさっきから気になっているんだが、その手に持っている籠には何が入っているんだ?」
「ん? んふふ、それはねぇ。はいお水」

 士郎が上げた疑問の声を聞くと、瞳の中に怪しく光らせたメイドは、にやにやと笑いながら籠の中から水が入った皮袋を取り出した。

「あ、ああ、ありがとう」

 差し出された皮袋を受け取った士郎が、にやにやと笑うメイドを警戒しながらも、折角用意してくれたんだしとそれに口を付ける。皮袋から水を飲み始める士郎を見たメイドは、素早く籠の中から一枚のタオルを取り出すと、獲物が隙を見せた際に猟師が浮かべるような笑みを浮かべた。

「んでんで、はいふきふきっと」
「っぐ、ちょ、それはいいって」

 皮袋から水を飲む士郎にててっと近寄ったメイドは、手に持ったタオルで姿がない汗を拭き始める。
 キスするかのように顔を近づけるメイドを、士郎は口の中にある水を吹き出しながら慌てて引き離す。

「あんっもう。あはは、テレちゃって可愛いっ」

 一旦離れたメイドだったが、スッと目を細めにんまりと笑い猫のように尻をフリフリと揺らすと一瞬で士郎の腰に抱きついた。

「ちょ、おい。抱きつくな、って、頬を寄せるなっ」
「ん〜……ちゅっ」
「―――キスするなっ!」

 腰に抱きついたメイドを士郎は振り払おうとする。しかしメイドは慣れているのか、士郎の手を掻い潜りながら身体を上り詰めるとその頬にキスをした。
 
「あ、ずるいです。わたしも、えいっと」
「お、おい待て、ちょ
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