行洋、楊海
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は「はは」と短い笑いで答えた。楊海は煮え切らない行洋に、もう一言つけ添える。
「先生はsaiばかりを追っているけれど、他を見ることもいいですよ」
「だからこういう風に海を渡っていろんな所を回っているんじゃないか」
「それはそうですけど。ネット碁もまたしてくださいよ。先生の対局を見たい」
「そうだ」と行洋が言って少しした後、行洋は何となく嬉しそうに語りだした。
「数か月前に私の弟子が置き碁でアマチュアに負けたんだが。芦原という四段の子だよ」
そのくらい何でもないが、と期待が外れて楊海は途端にだらんと椅子にもたれかかった。
「四子置かせて、50近い目差だったんだ。もちろん弟子は本気でね」
「へえ。知らない所にいるもんですねえ。そんなやつが」
興味のなかった楊海も椅子から乗り出して机に肘をついて食いついてくる。
「ああ。前にもこんなことがあったんだ。その話を聞いた時、懐かしくてつい思い出してしまったよ」
「何をですか?」
「息子が全く素人のはずの同い年の子に負けたことだ」
楊海は驚きにぽかんと口を大きく開け、「素人とはどういうことなんです」と問いただした。行洋は目を細めて、感慨深げに呟いた。
「私もよく分からん。まあ知らない所に強い者は居るということだな」
対局内容を知りたかった楊海は行洋に並べるよう頼んだが、もちろん行洋はそれを知らない。もったいぶってなんかいないということを楊海が表情で理解すると、深くため息をついて再度椅子にもたれる。
「君の言う通りだ。またネット碁をやってみるよ」
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