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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十八話 これは戦争だ
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「一体何が有ったんだ、それに何が書いてある?」
トリューニヒトが放り投げた書類をホアンが顎で指し示した。帝国のレムシャイド伯から送られてきたメールに添付されていた文書を印刷したものだ。

「オーディンの地球教団支部を帝国が強制捜査したらしい」
「強制捜査? ではあの報道は真実なのか?」
「部分的には真実だろう」
トリューニヒトがホアンの問いかけに顔を顰めて頷いた。昨日、マスコミの一部が帝国が地球教団を弾圧していると報道した。大勢の信徒が理由も無く殺されたと報じていたが……。

「地球教徒がヴァレンシュタイン元帥暗殺を謀った疑いが有ったようだ。強制捜査を行ったが地球教はかなり激しく抵抗したようだな。教団側の死者は百五十名を超えたと書いてある」
「百五十? それが捜査なのか? 戦争の間違いだろう」
ホアンの驚いたような声にトリューニヒトが頷いた。
「地球教徒は銃火器で抵抗したそうだ、市街戦に近かったのかもしれん。ちなみに捕虜は六十名を超えている」

ホアンが溜息を吐いた。
「銃火器で抵抗? まるで軍隊だな。捕虜より死者の方が多いとは……」
「帝国側も三十名程が死んでいる。容易ならぬ事態だ」
容易ならぬ事態、その通りだ。地球教徒が市街戦を行う? 死者は百五十名? 馬鹿げている、到底信じられない。

「教団支部を制圧後、押収した資料の中に地球教団がヴァレンシュタイン元帥の暗殺未遂事件に関与した証拠が有ったそうだ」
何のためにヴァレンシュタイン元帥を暗殺しようとしたかは問うまでも無いだろう、帝国を混乱させるためだ。

「フェザーンとの関係は? 帝国と同盟を共倒れさせようとしている証拠は見つかったのか?」
私の質問にトリューニヒトは首を横に振った。
「残念だがそれは無かったそうだ」
「そうか……」

ホアンに視線を向けたが彼も首を横に振っている。事態は進んでいるのだろうが必ずしも良い方向に進んでいるとはいえない。肝心なところが分からない。
「帝国は地球教団を帝国の公敵と認定した。地球討伐のため艦隊が派遣される事になった」
「帝国は本気で地球教を潰すという事か」
「その通りだよ、ホアン」

少しの間、執務室には沈黙が有った。
「トリューニヒト、昨日からマスコミの一部は帝国が地球教団を弾圧していると報道している。同盟政府の見解を聞きたいという質問も出ている。今のところは調査中で答えられないと回答しているが……、どうする?」

トリューニヒトが考え込む姿を見せた。人差指でコンコンと机を叩いている。信教の自由が絡むだけに厄介な問題だ。十回ほど叩いてから口を開いた。
「こちらも捜査に踏み切ろう」
“いいのか”と問い掛けるとトリューニヒトは無言で頷いた。トリューニヒトも本気になったという事か……。


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