9.子どもが生まれたら犬を飼いなさい
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った港でな、積まれたコンテナの陰に捨てられていたんだ。放っておくのも可哀想だったから、とりあえずウチに連れて来たんだ」
なるほど、捨て犬ということか。それにしては毛並みが綺麗だが、恐らくは俺が帰ってくるまでの間に風呂に入れられたのだろう。微かに石鹸の香りがする。
両親の手元には牛乳が入っていた痕跡のあるペット用の皿がある。家に着くまでの道中で購入したのだろうか。
顔を上げ部屋を見渡すと、テーブルの上に買い物袋が置いてあった。がさがさと中を覗くと、そこには首輪とリードなど諸々のペット用品が。
「ひょっとして、この子、家で飼うの?」
「いや、引き取り手を捜そうと思っていたんだが……ケンジ。お前、飼いたいか?」
顎に手をやった父さんが尋ねる。
問われ、俺の後を追って付いて来た犬っころを眺める。そっと手を差し出すと、鼻を近づけ匂いを嗅ぎ、ぺろりと舐められた。ぞくりと体が震え、犬っころの尻尾が揺れているのが目に入った。
ペットを飼うというのはそう簡単なことじゃない。一つの命を預かるということには、とても大きな責任が伴う。そこそこ大人の俺はそのことをちゃんと理解している。
俺は、俺は。
「飼いたい、です」
「ちゃんと面倒見れるかい?」
「うん、しっかりお世話をする。散歩にもちゃんと連れて行く」
「途中で放り出したりしないかい?」
「大丈夫。責任は俺がとる」
「……生意気言いやがって、このっ」
父さんにがしがしと乱暴に頭を揺さ振られる。助けてと視線で母さんにSOSを発するが、しっかち受け止められた上で笑顔で無視された。ひどい。
ああ、でもなんだか安心する気がする。こうして本当にただのガキみたいに扱われるのはいつ振りだろうか。下手に中身だけが大きくなっているからこういう風にはあまり接していなかった気がする。
俺自身そう思ってしまうってことは、この両親も同じように寂しさなんかを感じていたのかもしれない。これからは、たまにはこんな感じで歳相応に触れ合うべきなのかもしれないな。
「アナタ、それくらいにしてあげて。ケンジの髪がぐしゃぐしゃじゃない」
無骨な親父の手が離れ、代わりに母の柔らかな手が頭に触れる。丁寧な手つきで手櫛で髪を整えて、袋から取り出した首輪とリードを俺に手渡してくれる。
「ケンジが飼い主なのだから、ちゃんとつけてあげてね」
「はーい」
赤い首輪を広げ、犬の首に巻きつける。言われるより先にお座りしてくれるこの子はとても賢いのではなかろうか。
苦しくないようにそこそこの力加減で締め付けて、少し離れたところから視て出来栄えに惚れ惚れする。
「よし!それじゃあこれからなのは達のとこに行って自慢してくる!」
「おう、行って来い」
「車には気をつけるのよ」
「分かった!よし行くぞ、えっと……」
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