9.子どもが生まれたら犬を飼いなさい
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なヤツさそうことないわ!アタシたちの力だけでこいつに勝つのよ!」
「ああ、待ってよアリサちゃん〜!」
「ありゃりゃ、ごめんねケンジくん。お勉強会はまた今度ね」
吠え面かかせてやるわー!と鼻息荒く教室を飛び出していく金髪のお嬢様を慌てて追いかけていくなのはとすずか。
ううむ。これはちょっと煽り過ぎたかな?反省反省。
がしがしと髪を掻き、まあいいか、と結論付けて、俺も教室を後にした。
「ただいまー」
小学生の身には少々重めの扉をうんとこしょと開け、とりあえずは挨拶。例え返事が返って来ても来なくても、きちんと言う事にしている。親の教育が良かったからね。
「「おかえりー」」
と、廊下の奥から声が聞こえてくる。家の前に車が止まっていたから分かってはいたが、今日は両親の帰宅は随分と早かったようだ。帰ってきたとき誰もいないことがあるから俺は鍵っ子だったりする。
ばたばたと靴を脱ぎ捨て居間を目指す。仕事の都合上帰宅時間が不定期になりがちな両親が珍しく早く帰ってきたのだ。息子として労いの言葉の一つでもかけるべきだろう。
廊下を進み、遮る扉を開ける。
「わん!」
犬と目があった。
子犬より一回り大きい位の、柴犬。絨毯の上で父と母に挟まれていたその犬はくりくりとした目を闖入者である俺に向けて、何を思ったのかとことこと歩み寄ってくる。
膝を折って姿勢を低くすると丁度俺の顔と犬の顔が同じ位置に来る。近寄ってきた初対面のワンころに如何対応したものかと数瞬考え、
「おすわり」
「わん」
「お手」
「わん」
「おかわり」
「わん」
「伏せ」
「わん」
「かわいい!」
床にぺったりと伏せた犬に飛びつき、きつくない程度に抱きしめる。わんちゃんは嫌がるそぶりを見せることも無くごろごろと擦り寄ってきた。どうもある程度は人に慣れているらしい。
わしわしと犬っころの首筋を撫でていると、ふと両親が微笑ましいモノを見る目を向けていることに気付く。
「あらあら、ケンジったらすっかり夢中になっちゃって」
「すっかり猫可愛がりだな。いや、この場合は犬可愛がりか?」
その単語は猫限定に使われる言葉だっただろうかと考えそうになるが、しかしそれ以上に今の光景を見られたという事実に対する羞恥のほうが大きかった。
俺もうそこそこいい歳なんですよ?見た目は子ども、中身は大人のリアル派ですよ?うわ恥ずかしい。あのバーローみたいに演技じゃなくて素で喜んでたのが死にたいくらいに情けない。
思わず抱いた犬の毛皮に顔を埋める俺の心情を知らず、両親はさらに嬉しそうにする。
「ところで、この犬はどうしたのさ」
場を進めるために、内心の動揺が表に現れないように頑張りながら問いかけた。
「ああ。今日到着の南アフリカからの船を出迎えに行
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ