第9話「前夜」
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が一瞬だけ膨れ上がった。それきり膨れた部位は動かなくなった。
――何をした?
内心で首をかしげたままそれを見続ける。
尾で切ることも、腕で裂くことも使えなくなった竜種は背中の翼をはためかせ、上空に一旦停止下。かと思えば、矢の如く突き進み、タケルに襲い掛かる。
――これは避けられんな。
傍から見ていたエヴェンジェリンが他人事のように呟き、一旦目を開けた。少しつまらなそうな顔をしている。
「茶々丸、茶をくれ」
「はい……もう見なくても宜しいのですか?」
すぐさまお茶を差し出しつつも尋ねる。
「……ふん、もう終わった」
不機嫌に呟き、それでも一応確認のために彼女は再度目を閉じ、そしてその光景を見たとき、驚きにその心を染めた。
矢の如く突き進んできたドラゴン星人の速度は、今までのように避けることも受けることも不可能なほどに速いものだった。直撃すればタケルの体に綺麗な穴を開けるだろう。
――だが、いやだからこそ。
タケルは目をそらさない。ギリギリまで敵の動きを見据え、たった2歩。真っ直ぐ後ろに下がった。
もはや一本しか残っていない腕に銃を掲げて、目を、耳を、気配を研ぎ澄ます。
「アキラメ……タカ!!」
ドラゴンが突き進む。タケルに迫り、そして――
「ナ!?」
――な!?
驚きの声がなぜか二重に、耳と頭の中に響いた。
貫かれたと思われたタケルの体は、5センチ程えぐられる程度に収まっていた。
誰よりも真っ先に勝ったと思ったドラゴンは自分の体を確認する。そして驚きからか、ただでさえ大きな目をさらに大きくさせた。
その強靭な体は地面に拘束されていたのだ。しっかりと地面に突き刺さったアンカーがレーザーを食い込ませ、ドラゴンの自由を束縛する。
「……ふぅ」
疲れからか、それとも血が足りないのか。ドラゴンの吐息の射程に入らない位置に移動し、どさりと腰を下ろして目を合わせる。
「ぐ、グギギ……ウゴ、カ、ナ……イ」
悔しげに体を動かそうとするが既に両腕も動かず、最初にレーザーを切った尾も今は動かないためどうしようもなくただ体を揺するのみで終わる。
「ナ……ゼ」
――あの一瞬で?
転送の始まったドラゴンが、最早冷静な顔でタケルに首をかしげた。タケルは「ふ〜」と息を吐きそして言い放つ。
「……企業秘密だ」
その答えに一度だけ目を瞬かせ、そしてドラゴンはフッと笑い、その体をこの世界から消した。タケルは地面に転がり落ちたいくつものアンカーを見つめる。
「……まさか3発も撃つことになるとは」
――下手をすれば死んでいた・・・。
一直線に地面めがけ
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