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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その4---
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遺骸を囮に迎撃適地におびき寄せる " という策を採ることをヴォルツは肯んじなかった。
 近衛騎士としての体面、それに安っぽい(プライド)り、これは今の彼を動かす行動理念の芯であって全てであり、それがカネと自分の命、それに気にいったことにすげ替わるのはもうすこし先の話であるからだ。



 ……左眼に突き刺さっていた矢はそのままであるのを既に確認できていた。
 死角となる向かって右へ回り込み浴びせかけた一太刀は、なまなかな相手であっても深手であったに違いない。
 だが、浅い傷に留まったことに(ヴォルツ)は嘆息した。
 巨熊の背後から放たれた矢が二本、突き立つ。
 ヴォルツに負わされた傷とその新たな矢傷への怒りであろうか。
 咆哮を上げた巨熊。
 しかし、いや、だからと言うべきか、方向を転じて突進とも逃走とも取れる動きを見せた。

「アルバン! デジレ! 気張れよぉ!」

 ヴォルツが名を呼んだ二人の兵士を中心に村人達もが突き出した長槍(パイク)の舳先へと巨熊は駆けたが、槍衾を目にした為か、さらに方向を転じた。
 叫ぶだけでなく、距離を詰めていたヴォルツは側面から長剣を突き刺す。
 肉や骨に食い込み、抜けなくなった長剣から手を離すと従兵からひったくる勢いで長巻を受け取り、一振りしてからまたもや脇腹に突き刺す。

()てぇ、斬鉄之剣(アーマーキラー)でもありゃいいんだが……」

 思わず無いものねだりをしてしまうが、その刹那、身を前に投げ出し一回転すると起き上がった。
 薙いだ巨熊の腕が、それまで彼の居た場所を通り過ぎたからだ。
 その際手放した長巻は地に転がり、無手となった彼だが目についた物があったのでそこを蹴りつけた。
 ……それは必死になってマノンが巨熊に突き刺し、いまだ巨熊に食い込んでいた小刀(マキリ)であった。
 このような巨獣であっても痛みというものはあるのだろう。
 悲鳴とも咆哮ともつかぬものを上げた際、ヴォルツの長剣はそのはずみで抜け落ちた。
 ソレが地に落ちる前に掬い取った(ヴォルツ)は、身体を半回転させながら浅く、二連、切りつけた。
 やおら二本足で立ち上がった巨獣は肩や胸に新たに矢を受けて(ひる)むかと見えたが、そんなものはお構いなしに、高みから勢いを付けた旋風が如き一撃を、咆哮を上げて振り降ろした……



 ……紙、六重くらいでソレを避けたヴォルツは、大きく開かれた巨熊の口内に長剣を突き入れていた。
 反動(カウンター)となったが為か、それともやはり外皮と異なるがゆえか、脳髄をも突き破り、切っ先は頭部から飛びぬけ、彼に生臭い血しぶきが降りかかる。
 それを避けようとしたことが幸いした。
 長剣から手を離したヴォルツは後方へ飛びすさったが、それまで彼の居た位
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