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真鉄のその艦、日の本に
第九話  叛乱への反旗
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男の仕業なのだろう。どうやったのかは分からない。しかし、この男がやった。

突然の古本の発砲と、その銃口の先に現れた一人の日本刀を持った妙な男に、救急搬送に忙しく動き回っていた近衛師団の兵士もその手を止める。多くの視線が自身を捉えようが、日本刀を持った男は構えを崩さず、微動だにしない。
古本も、その男に銃口を向けたまま、固まっている。


「………はぁ〜あ」


声に出して息をつき、古本はその銃を下げた。すると、日本刀の男もその大太刀を鞘にしまう。一体どういう事なのか、近衛師団にもさっぱりであった。呆気にとられたまま、両者の挙動に釘付けになっていた。

古本はその場に腰を下ろし、自分の対物ライフルを不意に解体し始める。恐ろしく慣れた手つきでアッという間に銃を元のケースにしまうと、そのケースを肩越しに負って、踵を返して歩き始める。


「おっおい!君!どこに行くんだいきなり!」


いきなり発砲したかと思うと、自分が撃った相手に背中を見せて悠然と歩き始めた古本を、前線指揮官が慌てて呼び止める。古本は実に簡単に言い切った。


「ああ、悪いなおっちゃん。俺アイツには勝てねーわ。だから逃げる。」


あまりに唐突な物言いに、前線指揮官も怒るより先に力が抜ける。勝てない?勝てないって事はありゃ敵なのか?逃げる?逃げるって何だそれはそんな事が許されるのかそんな選択肢が用意されているのかお前恥ずかしくはないのかそもそも(以下略


「だって、アイツ世界最強なんだもん。勝てる訳ねーべ?意味わかんねぇんだもん、あの強さ。お前らもとっとと逃げな。さすがに背中見せるような奴に切りかかっちゃこねぇから。」


言いたい文句がありすぎてかえって固まってしまった前線指揮官に、その逃げ足は止めず飄々と古本は語る。


「だよなぁ、瀧ィ?それがお前の人の好さだもんなぁ?」


ふと振り向いて、日本刀の男に呼びかける古本。瀧と呼ばれたその男は、眉間に皺を寄せたその表情はそのままに口だけを動かして応える。


「逃げるんなら、とっとと行け。負け犬。」


跳ねつけるような調子で言われた古本は、苦笑いしながら手をひらひらと振った。


「あの世でまた会う時がありゃ、そん時は久しぶりに飲もうぜ、裏切り者。…徳富ィ、後は任したぜ〜」


古本はもう一度瀧に背中を向け、歩き出す。
徳富は慌てた。


「ちょっ、本当に帰っちゃうんですかァ!?」
「当たり前よぉ〜上戸のヤローにも許されてるんだし別に良いだろ〜」
「ですけども!可愛い後輩が心配になったりしないんですかァ!?」
「うん、全然。キャバの姉ちゃんが無事かどうかの方が気になるな〜」


背中越しに徳富にかしましく騒ぎ立てられても古本は
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