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真鉄のその艦、日の本に
第九話  叛乱への反旗
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俺は副長じゃないと、他の何でもなくなっちまうんだ。他にない、これは命に換えても守ろうとしなくちゃいけないもんなんだよ!」

長岡は自ら、遠沢が構えた拳銃に自分の心臓を押し付けてやった。遠沢の形の良い輪郭の顔が紅潮し、その銃口の震えは、長岡に直に伝わる。長岡は何故だか、勝った、と思った。
そしてそれは、間違っていなかった。

「…阿呆です。本当に阿呆ですよ…」

遠沢は銃を下げた。恨めしそうに、長岡の顔を見上げる。長岡はニンマリと笑った。


「男は、みんなこんな感じの阿呆だけん。…ここに居たらまずいんだったか?じゃ行くか」
「どこへですか?」
「とりあえずは作戦を練る。奴らに分からん所に行くぞ」


長岡は駆け出した。
遠沢はそれについていった。
ドタドタと走るおっさんと、鹿のようにひょいひょいと、足音も立てずに駆ける女。何とも滑稽な図だが、それを突っ込む者はその場には居なかった。

――――――――――――――




「ふぅ〜」


古本は大きく息をついた。手に持っていた対物ライフルを地面に置き、両手を合わせて空に向かってうん、と伸びをする。

その周りには、引き裂かれた沢山の屍。近衛師団のものもあれば、飛虎隊のものもある。地に倒れ伏して、血を垂れ流して積み上がったそれらを目を細めて見渡しながら、古本はつぶやいた。


「弱かったな〜。返り血もつかず終わっちゃったよ〜。」


それは実際、1分もかからぬ出来事だった。
陸軍近衛師団の陣地に突貫する飛虎隊。その動きたるや、まるで同じ人間ではない。尋常ではない速さで走って、近衛師団のバリケードに肉迫し、携行したマシンガンで弾をばらまいた。
一瞬の出来事である。恐らく、近衛師団の兵の多くは何が起こったかを知覚する前に四散した。彼らの携行しているマシンガンというのは、その口径を見れば機関砲とも形容すべきもので、普通の盾やバリケードの類は簡単に吹き飛ばしてしまう。そのような銃を持っての、そのような常軌を逸した動き。飛虎隊も山犬と同じように、普通の人間の部隊ではない事は明らかだった。

しかし、古本にはその動きが見えていた。この場で彼らの動きを簡単に目で捉える事が出来ていたのは、古本と徳富だけであろう。この日本で10人だけの、原液のHソイルにより死亡する事なく覚醒した人類、この場に居る2人がそうだった。彼らにとっては、飛虎隊の連中の動きはワンパターンに見えていた。

飛虎隊の兵士は、強化人間である。しかし、山犬のような希釈Hソイルによる強化ではなく、外科的手術による強化だった。その点、人体改造を施されたサイボーグとも言える。
全身に小動物の脳を配置し、動きのパターンを記憶させるという方法である。これにより本来の脳に神経伝達が行われるよ
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