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真鉄のその艦、日の本に
第五話 蹂躙
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!さあ!」」」
「うぐぅぁあっ……」

左腕を持つ和気が、その腕を思い切り捻じり上げる。加減はない。すぐに遠沢の関節は悲鳴を上げ、そして外れる。右腕を掴む和気は、肘関節を逆に折り曲げた。ぼきっ、と音がする。

「ぁあぁああああああ」

うめき声を上げて苦しむ遠沢を、和気は嬲り続ける。実に楽しそうに。

「「「おい、何だそれは?何て非力なんだ。俺もポンコツかもしれんが、お前もポンコツだな。俺以上にポンコツだ。ただの若い女でしかない!ハハハハハハ」」」

地下に、遠沢の呻きと、和気の笑い声が響き渡る。この二神島基地には、この2つの人格以外には、誰も居ない。

「「「なぁお前、何故この大きさの島がずっと無人島になってたと思う?それはなぁ、ここ地下五階のこの設備、これは俺たちのような複製人間を作るプラントだったからだ。世の中の目を欺きながら、戦う為だけの人間、戦って死ぬ為だけの人間、それを作るここは設備だったんだ。ポンコツ共の工場だよ!」」」

複製人間は、和気を見れば分かるように、ある程度の成功を見た技術である。それが何故幸せ草エキスによる強化人間にとって代わられたかというと、これは寿命に問題があったからだ。それなりの人間はできる。しかし、早死にする。その短い寿命を使い潰すかのように機械改造したり、体の中の余計な機能を廃したりなど、さらに非人道的な試みがなされ、さらに手間をかけて運用されるようになった。複製人間を改造したりするのは心が痛まないという事だろうか。こうして金をかけて造り改造される複製人間より、普通の人間を薬物強化する方が、年数も保つし、何より安い。こうして、複製人間は作られなくなった。
和気はその複製人間と強化人間の切り替えの過渡期に作られたものである。試験管の中で成長促進されて人生の中の幼少年期をすっ飛ばされ、需要が無くなった事による廃棄処分に反発して脱走し生を求めた、その命のリミットは確実に迫ってきている。

「「「このポンコツの生まれ故郷でポンコツに嬲られて、優秀な強化人間であるお前は何を思うんだ?自分が駆逐した存在に痛ぶられて何を思うんだ?言ってみろよ!」」」

和気の叫び声が響く。その言葉の中身から遠沢は、自分に対しての憎しみと同じくらい、和気の和気自身への憎しみを感じた。自己を肯定できない、悲しい存在。不完全な存在として生まれてしまった事への思いが滲み出しているような気がして、遠沢は痛みに顔を歪めながら、しかし、哀れむような目で、和気を見た。

地下五階。和気の叫びを、遠沢以外に聞く者は居ない。



六話に続く。




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