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真鉄のその艦、日の本に
第四話 激突
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足だから拾ってあげようかと思っただけの話。」
「へぇえ、一度戦った相手でも利用しようというその節操の無さァ。やりあった時からその感じは分かっちゃいたけどな。」

印出は傭兵だった。紛争地帯を巡り巡って戦う傭兵だった。ある時は米軍の外人部隊、ある時は中東反米ゲリラの一員、ある時は反中共の民族戦線、ある時は…etc
金と働く場を求めてどこにでも行き誰とでも戦った。自分は敵を殺す兵器の一部でさえあればいい。自分の武力の使用権を売り、自分の力がどう使われようと知った事ではない。
そうしてつい最近雇われたのが、日本内の共産ゲリラだった。印出にとっては働く場所が生まれ育った国であろうと、国籍上の祖国が敵であろうと関係がない。自分がどういう目的に使われるかには興味がない。
ただしかし、印出はこの仕事を受けた事を後悔はした。
こちらから打って出る前に、日本政府側に攻め込まれた。東機関だ。
印出も、常に自陣営を勝ちに導いてきた訳ではない。一人の歩兵が出来る事など限りがある。自陣営が負ける事も数えきれないくらいあった。しかしその度、上手い事逃げおおせていた。今回はそれすらもままならなかった。
圧倒的な差があった。完敗だった。

「あなた、何と戦うか、何の為に戦うかは興味がないと言ったわね。だったら、ウチに雇われても問題は無いでしょう。我々はあなたの衣食住と仕事を保証する、あ なたはあなたの力を提供する。国家反逆罪で死刑のはずだったのに、国の為に能力を活かしながら生きていける。多くの人々の役に立ちながら生きていける。悪 くない話じゃないかしら?」
「衣食住の保証だけで命のやり取りする値段に足る訳ねえだろふざけんな」

上戸の提案を印出は鼻で笑う。椅子に踏ん反り返って、伸び放題の髪をいじりながら上戸を斜めから見た。

「何の為に戦うか興味はねぇ。だから国の為に戦う事が、反政府ゲリラで戦う事より道徳的に立派だろうと、そんな価値はどうでもいい。そんな糞みたいな条件で働けるかバーカ。経済の市場化に逆行するにも程があらァ。何だ衣食住の保証って。共産主義かよ」

印出に強烈に突っぱねられた上戸の、厚い唇がピク、と痙攣したように震える。心なしか、眉間に皺が寄る。

「…貴様、どうして我々が日本赤軍の10分の1以下の人数にも関わらず、ああも圧倒的に状況を制圧できたか、分かるか?」
「個人の練度が違いすぎた。さすがに正規の特殊部隊とゲリラじゃ、比較にもならねえ」
「貴様は、二階まで壁を駆け上がったり、銃身の傾きで射線を読んだり、そんな事が訓練だけでできるようになると思ってるのか?」

上戸の表情は変わらない。しかし、先ほどまでと明らかに雰囲気が違う。高く通る声が低くなった。女言葉が無くなった。わずかに顔の筋肉が強張っている。

いや、違う。表面上
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