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真鉄のその艦、日の本に
第四話 激突
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犯ですぞ、今更何の用事が」
「用事があるからわざわざ来ているのです。いちいち我々の意図を末端のあなた方にまで説明して居られますか。彼の処遇は我々に委ねられたのです、黙って従って頂きたい」

はきはきと通る女の声が確かに聞こえ、印出は質の悪いベッドから一瞬で身を起こした。
鉄格子の向こうに、異質な訪問者が立つ。
制服を着こんだ屈強な刑務官が三人、渋い面をした刑務所長、そして

黒のパンツスーツを着込んだ、すらっとしなやかで、背が高く、厚い唇が艶やかな細面の女。

「ほう、噂で聞いた通りの汚らしい男ね」

不敵な笑みを見せながら、東機関・上戸局長は印出を見下ろす。

「何だ嬢ちゃん、婚約でも申し込みに来たのか?」

印出も、ニヤついた顔で上戸を見返した。

―――――――――――――――――――

印出は久しぶりに日の光を見た。眩しすぎて、顔をしかめずには目を開けていられない。
上戸に手錠付きで連れ出された印出は、上戸の車に乗せられ、またどこだか分からない山奥の別荘風の建物の一室に通された。

「風呂にでも入ってきなさい。臭い。」

割と豪華な、しかし窓の無い部屋の中で上戸は印出の手錠を外した。そして体を洗うよう言われる。印出は従った。部屋に備え付けられている風呂も、豪勢な風呂である。印出はここ数ヶ月分の垢を落とす勢いで自分の体を洗った。これでもかと時間をかけて湯に浸かった。ここまで風呂が快適に思えた事はなかった。

風呂から上がった脱衣場には、囚人服ではなく綺麗に洗濯された服が用意され、印出はそれを着込んだ。部屋に戻ると、上戸がテーブルの席についていた。

「ここに座りなさい。」

印 出はその言葉にも従い、上戸と対面するように座った。上戸が立ち上がってテーブルの上にあるティーポットを手にとり、印出の席に置いてあるティーカップに 赤茶色の液体をなみなみと注いだ。上戸が自分のカップにも紅茶を注いでる間に、印出は何も言わず、カップを手にとって上戸の入れた紅茶を飲んだ。上戸が呆れた顔をするのも、印出は意に介さない。

「うめぇ茶入れるじゃん、りえちゃん」
「馴れ馴れしいわよ。…気持ち悪い」

馴れ馴れしく下の名前を呼ばれ、毒づいて印出を睨んだ上戸の様子に、印出は更に嬉しげにニヤつく。

「なんだい、じゃあ局長様とか呼んで欲しいかい?東機関のうら若き局長様。泣く子も黙る東機関を統べる、日本の裏の女王様だ。それがこんな死刑囚に何の用だ?俺に惚れちまったとしか考えられねーなー」
「それはないから安心しなさい」

ムキになるのはこの男に対しては無駄だと分かった上戸は、すぐに澄ました顔に戻って、自分の紅茶を啜る。

「あなた、人間的には認めたくないけど、それなりに優秀な傭兵だから。ウチも人手不
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