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真鉄のその艦、日の本に
第四話 激突
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つの人格…!」

遠沢に、自分の事、自分達の事を言われて、和気の顔がにやりと歪む。

「「「これはこれは……俺にとっては因縁のあるお嬢ちゃんが現れたもんだな」」」
「「「Hソイルの適合者第一号者の小娘か」」」


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サイボーグ技術、アンドロイド技術。
人体を改造すること、そして目的に合った能力の人間を「作る」こと。
その研究は、日本軍の組織の奥深く、誰の目にもつかない所で、しかし莫大な予算を投じられて行われていた。
小国日本の軍事力を、戦艦、戦車、戦闘機、それら兵器の性能の向上によって引き上げようとする動きは、それは世間一般にも知られたものである。技術投資が行 われ、技術革新が起こり、蒙古型戦車は、雷電改は、そして建御雷はその流れの中で作られた。圧倒的物量を誇るアメリカの軍事力、その軍事力の波に呑まれま いとする日本の、物量に質での対抗を試みようとするその努力は、一定の成果を見た。世界一の大国の軍にも、一目置かれ、攻撃した場合のリスクを想定させる程度にはその戦力は向上を見せたのである。
兵器の使用にも高度な知識、技術が要求されるようになった現代戦に於いては、単純な人的兵力の多寡は以前に比べその意味を失いつつある。
そして、日本軍技術本部に流布する「質」の神話は、未だに「数」の持つ意味が大きい歩兵戦力の分野に対しても挑戦を始めた。
兵の「質」の向上を試みるようになったのである。その試みの人道的是非はここでは問わない。そして10年前、ある二つの要素の出現により、機械的肉体改造と人造人間の作成が主だったその分野に、大きな変化がもたらされた。
今は亡き旧ナチス・ドイツによる、失われたはずの研究の産物「幸せ草」、そして「幸せ草」から抽出した「Hソイル」による強化が成功した初めての個体

「遠沢」によって。


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3年前だった。印出は暗い部屋に居た。部屋の隅には排泄用の穴、やたらと硬いベッド。明かりが少なくとも、この部屋が薄汚れている事だけははっきりと分かった。印出はここがどこかも知らない。何日の間、日の光を見ていないか分からないくらいである。

「死刑」

その言葉を法廷で聞いてから、この地下の牢に放り込まれ、それ以来、外の世界には出ておらず、この狭い汚い部屋だけが印出に与えられた全ての世界であった。そうして退屈そうな顔をして、ベッドに寝転んでいるだけの印出に、久しぶりに会いにくる人間が居た。
カツカツと鳴る靴音、そして話し声が廊下の向こう側から聞こえてくる。いつも黙って臭い食事を運んでくる看守以外に誰もいない地下牢においては、久方ぶりの刺激である。印出は耳をすませた。

「どういう事ですか?あいつは明日にでも死刑になる凶悪
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