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真鉄のその艦、日の本に
第四話 激突
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は、幾分の恐怖が芽生え始めている。その男は、先ほど自分達が撃ち倒した男そのものである。

「希釈Hソイルの定期投与による強化人間部隊、か。そりゃ、凡庸な人間なら、マトモに戦って勝てはしないだろう。1000人以上を皆殺し、1000人殺してま だ余るほどの弾薬を背負いながらの大立ち回り、さすがに東機関は人でなしを作るのが得意だ。殺人マシーンばかりを次から次へとこれでもかと」

印出以外の山犬部隊全員の顔が引きつる。何故、それをこの男が知っているのか。強化人間部隊については、強力な歩兵を欲してやまない陸軍にすら知らされていない、東機関の最高機密であるのに。

印出は、むしろ表情が緩んだように見える。ふふん、と鼻で笑った。

「何だ、お前。何かどっかで見た事あるかと思えば、お前、いつぞやのポンコツじゃねぇか。用無しになったゴミだ。バカ高い維持費がかかる機械人形さんじゃねぇかよ。」

印出の言葉を聞いて、和気は笑い声をあげた。

「そうだ、よく知っているなあ、貴様。うん、たかが身体能力の強化程度で済まされている三下の割にはよく知っている。」

和気が嘲ると、印出の目つきが変わる。
口元だけが笑っているが、目は見開かれ、和気に殺意の篭った視線を送っている。

「ごちゃごちゃうっせぇぞ、クズなりの身の振り方もできねぇクズが。」
「貴様らみたいな三下のせいで、俺は立場を追われた訳では無いという事、教えてやろう若造」

先ほど撃ち倒されたはずの和気が、不意にすっくと立ち上がる。そして、2人の和気の背後から、また一人、また一人……
「和気」が増えていく。次々と。次から次へと。

「こいつら、サイボーグだ。中々死なねぇぞ。死ぬまで殺してやれ。」

印出の声で、山犬部隊全員が銃を向け、身構えた。


――――――――――――――――――

遠沢は息を切らして、二神島の森の中を走っていた。叢原火に追いつかれて連れ戻されるかもしれない、とも思っていたが、上手い事撒けたようである。茂みを突っ切り、小川を飛び越えて、二神島の西側に向かって走る。そうして走り続けているうち、洞窟の入り口を見つける。
入 り口の脇には小屋。恐らく歩哨の為の小屋だろう。人が倒れていた。二人は、そのラフな服装からして統一戦線の兵士だろう。頸動脈をすっぱり切られ、大きな 血だまりを作って沈黙していた。その二人は放っておいて、遠沢は、特殊部隊の戦闘服を着て倒れている山犬兵士に駆け寄った。入り口に待機していた通信兵らしい。こちらは体から血を流している。が、駄目だった。もう既に息はない。その兵士は、大きな通信機器のバックパックを背負ったまま事きれていた。

遠沢は、一瞬目を閉じて手を合わせる。そして、その山犬兵士の体から、自動小銃とその弾薬、サバイバルナイフ
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