第三話 進撃
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っていた。島の中央部の密林で機動甲冑同士が戦闘状態に入り、その戦いを見守っていたかと思え ば、突然基地施設そのものに異変が起こりはじめた。いや、異変ではない。明らかに何者かによる攻撃を受けている。何者か、ではない。攻め込んできているの は明らかに日本の正規軍だ。岩盤に守られた地下要塞という安心感、機動甲冑による迎撃、統一戦線側には少なからず、攻撃を受けていても大丈夫だろうとい う、安心があった。それが直接今基地施設内に乗り込まれている。統一戦線はゲリラとはいえ、実戦経験が豊富な兵士ではない。ゲリラ戦の経験はあったとして も、闇から石を投げて相手を騙し打ちにするようなゲリラ戦は相手に正面から立ち向かうのとはまた違う。ただ無鉄砲と義憤だけで、その身を投じたという者も 多い。それが死の恐怖を目の前にして、敵と正面から戦うのは難しい。無理である。
「慌てるな。各員、遅延戦闘しながら後退。四階中央階段フロアにバリケード、陣地を作れ。残存兵力はそこに集結、敵を迎え撃て。」
指揮官だけは、他の誰とも違って落ち着いている。その落ち着いた指示も、オペレーターの動揺ぶりからすると、しっかり伝わるか分かったものではない。その様子を見て、指揮官は半ば呆れたように口元を歪めて苦笑いを作っていた。
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「?わ"あ"あ"あ"あ"」
絶 叫。そして乱射。統一戦線の、各々が繋ぎだったり、迷彩服だったり、シャツにジャージのズボンだったり。そんな雑多な服装の兵士達が叫びながら、迫りくる 「死」に向かってマシンガンを撃ちまくる。しかし、「死」とは往々にして、そのような、人間の必死の努力にも関わらずに無慈悲に襲いかかるものである。
「!!」
物陰に隠れ、弾幕を張っていたはずなのに、山犬の兵士は壁を蹴り、壁を走ってその物陰の内側に入り込んできた。
連続する銃声。その銃声は、全身黒ずくめの戦闘服を着た山犬兵士のものだ。
統一戦線兵士の体が、無数の弾丸を撃ちこまれて踊り、ぱっと赤に染まって沈黙する。
床 には血だまり。このような血だまりは、この二神島要塞の、そこかしこにできている。積み上がる屍、屍、屍。東機関直属要撃部隊「山犬」の強さは圧倒的だ。 そこらのチンピラに毛が生えた程度の統一戦線兵士など、全く相手にならない。赤子の手を捻るようなものだ。建御雷で立てた作戦は、基地内部に潜入し爆弾を 仕掛け内側から爆破するというものであったが、今山犬が行っているのは潜入などではない。正面きっての突入。そして殺戮である。
バリケードを作って抵抗していた統一戦線兵士の、その銃声が止んだ。対峙していた印出は、微かに「カチカチ…」と弾切れを起こしたマシンガンの音を聞いた。 印出もバリケードの向こうの様子を黙って伺う。するとバリケー
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