暁 〜小説投稿サイト〜
真鉄のその艦、日の本に
第二話  不穏
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いうのは、やはり人は能力をこそ信頼するというものなのかとも思う。

こんな事、別にお前がやらんでもよかろうに。

長岡は女が戦場に出るなどという事には反対だ。戦って体を張るのは男の仕事だと思っている。この遠沢にしたって、その能力、もっと他に活かせるもんだろうに。人を殺すより、他に相応しい道があるだろうに。

こいつの親は何て言うたんじゃ。

ふと、長岡は考える。それを考えると、また遠沢とは別の、丸顔の、優しい顔の女性の面影が長岡の脳裏に浮かんできた。

わしに娘は居らんからわからん。

長岡は考えるのを辞めた。
長岡に子どもは居ない。そして、これから先もできることはない。あの女との子どもは。


――――――――――――――――

「これはまた、大きなものを作りましたね。」

陸軍福岡駐屯地は、九州最大の拠点である。車両倉庫などの大型倉庫が並び、陸軍航空隊の滑走路、防衛用固定武装も散見される。
まさに要塞。その司令部施設の屋上から、二人の人物が空を見上げていた。

視線の先には、空を飛ぶ建御雷。両舷にエンジンが突き出し、前部は艦首が二つに見える擬似双胴式。重厚なフォルムだ。

「これは期待できますかね。」

二人は、屋内に戻った。


―――――――――――――――

「福岡にようこそ。どうぞ司令部応接室へ。」

建御雷を陸軍航空隊の滑走路に着陸させた後、田中と長岡は中央司令部からの指示通り、福岡の司令部に出向いた。
今後の任務を言い渡されるらしい。
田中にとっては、任務というのが気にかかる。
まだ出港2日目の我々に、何の任務を与えるというのか。まずは遠洋航海で隊の練度を上げるのが筋というものだ。一体どんな事が押し付けられるのか、気が重くなる。
ここまで何度も無茶は言われてきたが、今回はそれらの無茶を遥かに越えるような予感がしていた。
し かしまだ、今回は幹部が優秀だ。一年の研修を受けてきたとはのはあるが、護衛艦とは全く違う性質の飛空艦であっても、艦を動かせる程度にはなっている。副 長の長岡はいずれ艦長になる男だ。航海の脇本、操舵の佐竹は潜水隊からの出向で、三次元機動には慣れているだろう。本木の砲雷管制も、研修を見る限り悪くはない。
普通、護衛艦の幹部は部署が、艦が移っていくもので、専門を学び切る間もなく次の事を覚えていかねばならない。しかし、日本初の飛空艦でありながら、二番艦 建造の目処も立たない建御雷においては、ここから転属される事は考えにくく、その事が研修の動機につながったのかもしれないな、と田中は思った。
自分の艦長生活も、恐らくこの建御雷で終わる。

そんな事を考えているうちに、福岡司令部のオフィスまで来てしまった。通された部屋は会議室らしく、卓の向こう側に二人の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ