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真鉄のその艦、日の本に
第一話  接敵
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なっていたかね?」
「はあ、何しろ莫大な予算がつぎこまれてますし、面白そうなもん作ったなあ、という具合でありまして」

かしこまって話そうとしている割には所々雰囲気が軽い中野に、風呂元は田中が怒らないかヒヤヒヤしている。

「ふむ、今の日本でよくこんな代物を作る許可がおりたものだとは、私も感心しているよ」

飛空艦は、擬似反重力を発生させる新技術によって完成されたものである。その技術を完成させたのはアメリカで、今中共やEUで使用されているものもその技術のコピーであるが…

「私も技本に友人が居てな、設計図見ながらエンジンを覗いてみたりもしたんだが、あれは凄い。中共のものともアメリカのものともまた一味違っている。あれを日本人が作ったとしたら私も鼻が高いよ」

感慨深そうな田中に、中野は「はぁ、そうですね」と生返事を返した。風呂元がその脇を肘で小突く。

「中央司令部から艦隊勤務への異動は異例で、慣れん事も多いだろうが、これから中央司令部への報告も含めよろしく頼むぞ」
「はい、まあ、うん。早く中央に戻れるよう頑張ります」

風呂元が中野の足を踏んづけた。慌てて敬礼をして、2人は部屋を出て行く。廊下から女の怒鳴り声と平手の音を聞いた田中は、やれやれ、とため息をつき、手元の建御雷の設計図に目を戻す。

田中にはどうにもこの建御雷の造りにおいて、分からん所があった。設計図と、実際の造りに、ほんの少しだが違いが散見されたのである。それについて工廠の工員に尋ねても、問題ありませんの一点張りであり、その理由も伝えられなかった。

「また、上は何を考えているのか…」

田中は後退した髪をなでつけながら、窓から見える夜空に一人ごちた。


――――――――――――

そして、数日が経ち

建御雷が処女航海に出て行くその前夜


事件は起こった。



――――――――――――――――――

暗い、そして湿っぽい。トラックの荷台に押し込まれれば、それも当たり前だ。
しかし、こんな場所には慣れている。
堀の深い顔、目立つ無精髭。和気は、そう思うのである。

――――――――――――――――――

「?」

与勝基地の、幾つかのゲートの一つ、厳重に張り巡らされた鉄条網の切れ目の歩哨小屋で、警備兵が異常に気づいた。ゲートの前で、大型トラックが泊まり続けて道を塞いでいる。

「邪魔だな。どかしてくるわ。」
「へーい。」

歩哨小屋から一人の兵士が道に出て、トラックの運転席の窓を覗き込んだ。その瞬間窓が開き、兵士のヘルメットにコツ、と硬いものが当たる。

「パン!」

高く響く音。兵士の頭が血を吹き出し、糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。

「ガシャン!」


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