第一話 接敵
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にはしゃぐなよお前ら」
「建御雷」が鎮座しているドックに、今度は青の制服、帝国空軍の一団が入ってきた。
帝国空軍は、海軍航空隊と陸軍航空隊が戦力を出し合って作られている。どちらかというと、帝国空軍としては本土防空を担う事が多く、揚陸艦の要素が強い建御雷の航空隊任務には、対地攻撃を意識している陸軍航空隊の方が適任のように思われるが、陸海空三軍の協力によるマル三計画、の側面が重視された結果の配属であろう。
陸海軍に比して伝統が浅く、そして一部のパイロット以外は直接戦闘には赴かない。パイロットは皆、若いエリート。軍隊という組織の雰囲気が若干薄く感じられるのが空軍であった。
頽馬の搬入作業がひと段落し、ドック脇の転がっているコンテナに腰を下ろして珈琲を啜っていた遠沢に、その青の制服が近づいてきた。
「あれ、この制服って陸軍よな?」
「そうだな。陸軍だ。」
「陸軍にもこんな女の子おるんやね」
「俺も初めて見たよ」
自分を指差して話しているその一団に、遠沢は一瞥だけをくれてやって、すました無表情をピクリともさせない。その反応にも、なぜかその一団は喜んで声を上げていた。
そして、空軍の集団から、一人の男が遠沢に歩み寄ってきた。
「やあ、君、名前何て言うん?俺ね、帝国空軍の津村ってゆうねん。」
津村は、丸顔で目尻の垂れた関西弁の軽い男だった。津村の後ろでは、青の制服の連中がニヤニヤと笑っている。
「第11師管第7戦車大隊より参りました遠沢です。」
「おー、遠沢ちゃん?そんな畏まらんと、もっと笑ってーや可愛い笑顔見せてな、んふふ」
立ち上がって背筋を伸ばし敬礼した遠沢に、津村はさらに目尻を下げて鼻の下を伸ばす。年で言うと、多分遠沢と津村は同じくらいかもしれない。しかし、この温度差は同年代の男女のものとは思えない。
「下手くそなナンパしてんなボケが」
「あいたっ!森大尉〜ちょっと今良いとこ」
「相手にされとらんのはこの女の顔見りゃ分かる。さあ行くぞ」
さらに遠沢との距離を詰めようとしていた津村を、津村と同じ青の制服を着た、鼻が大きく無骨な顔をした一人の大男が首をつかんで連れて行った。
津村は口惜しそうな顔で遠沢を振り返る。
遠沢は、無表情の中にも呆れたような雰囲気を漂わせて、さよならの敬礼をしていた。
――――――――――――――
「中央司令部より着任致しました、中野です」
「同じく、風呂元です」
与勝基地の一角、まるでホテルのような上級将校用の居室に中野と風呂元は通されていた。
イスに座り、マドロスパイプでタバコをふかしている初老の男は、田中海軍大佐。眼鏡をかけた白髪交じりの男だ。建御雷の艦長を務める男である。
「中央司令部ではマル三計画について何か話題に
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