例えばこんな同居人はちょっと反応に困るんだが
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気にも留めなかった。
ふと、使い物にならなくなった物品が運び込まれる部屋が空いているのを見て、私は足を止めた。
――やめろ
私はその時不思議とその扉の先が気になった。不良品や壊れたものがどうされているのかを気にしてしまった。前々から気になっていたのだ。この部屋からは稀に運ばれた物品が中から再び出て来ることがある。だからここはただのゴミ捨て場などではないのだろう。
――やめろ!
見張りもロックもなかった。私はその時だけ子供っぽい好奇心を優先させてしまった。どうせこの騒ぎなら見た後でも逃げ出せる、あとで家族に会えばいいんだ、と。
――やめろッ!!
そこには物品の体を押えつけるベルトの付いた小さなベッドと巨大な被り物のような大量のコードにつながれた機械。近くのモニターに表示された文字に目が行った。それはデータのコピーが終わった後、偶然消去されないまま残っていたこの部屋の機材によって得られたデータの一端。
――それを、見るなぁぁーーーーッ!!!
『ケース33.仮想の恋人をインプット。前提感情が不安定だったため自我が崩壊。肉体の状況も芳しくなかったため調整を施し”納品”。ケース34はもっと抽象的な刷り込みを行う。
ケース34.仮想の家庭をインプット。今までに得られたデータを基に作成した仮想感情が上手く刷り込めた。ケース34は目的通りインプットされた情報を事実と認識して疑いを持っていない。肉体の状況もすこぶる良好なため、引き続き被験体として調整続行。このケースが他にも通用すれば被験体の精神崩壊予防と記憶刷り込みを確実なものとする足がかりになるだろう。
ケース34-2.上記と同じく仮想の家庭をインプット。途中までの経過は良好だったがロジックエラーが発生して精神が崩壊。肉体状況はまだ良好だったためケース35として再調整し、上書きする。 』
理解、してしまった。
そも、私に家族なんか本当にいたのか?いたならなぜ私はこんなところにいる?
家族の名前は何だ?国籍は?どこに住んでいた?何が好きで何が嫌いだった?夏と冬とどっちが好きだった?
その何か一つでも、私は具体的に覚えているだろうか?わたしに家族がいるという確たる証拠は?根拠は?
そもそも――ここには孤児という名の物品しかないと研究者は言ってなかったか?
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
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