第二章
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「それでもこう何でもとなると」
「ドイツ系としてはかい」
「もう少しドイツがあってもいいと思うけれど」
これはアイルマンのささやかな願いだった。
「そうも思うけれどね」
「そうなんだね」
「オーストリアはどうかな」
「我が国はオーストリアと仲がいいからね」
「だからどうかと思うけれど」
「音楽は入っているよ、お菓子もね」
この二つは、というのだ。
「それで満足したらどうかな」
「そうあるべきかな」
「まあ第一がフランスなのは揺るがないよ」
このロシアの宮廷においては、というのだ。
「君にとっては残念だろうけれどね」
「みたいだね」
「ピョートル大帝からの伝統だから」
この皇帝が西洋文化を大々的に取り入れてからのことである、ロシアがフランス文化を贔屓しているの。
「女帝陛下はまた特別だけれどね」
「うん、フランス文化への造詣も本当に凄いね」
「それでいてロシアのことをよく御存知だよ」
元々はロシア生まれではない神聖ローマ帝国の貴族の出であるがそれでもなのだ。
「まさにロシアの為にあられる方じゃないか」
「うん、僕も同じことを思っているよ」
女帝への忠誠、それも絶対のものをというのだ。
「あの肩は本当に素晴らしいよ」
「それにフランス文化も嫌いじゃないと思うけれど」
そのアイルマンもだと、グリドフは返した。
「そうじゃないかい?」
「その通りだよ、僕にしてもね」
「けれどこうまでフランスが多いと」
「どうもゲルマン系としては寂しいね」
少し苦笑いになって言う彼だった、そうした話をしつつ。
二人もまた宮廷の宴に来ていた、フランスの料理にフランスの美酒が堆いまでに置かれその中でフランス語fが聞こえる。
アイルマンもまたフランス語を喋り貴婦人達に応える、その中で。
知り合いのソルトロノフ伯爵夫人にこんなことを言われた、三十になろうとする気品のある婦人だ。
「大尉もそろそろ」
「結婚ですか」
「お相手はいないのですか?」
「まだです」
そうした話はないと夫人に素直に答える。
「そうしたお話は」
「あら、ではどなたか見付けられては」
「親がその話を進めているかも知れませんが」
貴族の次男だ、家と家の結婚は貴族の責務の一つでもある。
「ですが今は」
「ないのですか」
「はい」
こう答えるのだった。
「そうです」
「そうですか。では一時でもお相手を見付けられてはどうでしょうか」
伯爵夫人はにこりと笑ってこう提案してきた。
「そうされては」
「恋人ですか」
「結婚相手がまだでも」
それでもだというのだ。
「どなたか見つけられては」
「そう言われましても」
アイルマンは難しい顔で伯爵夫人に応えた。
「相手というものは」
「恋
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