第一章
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死神の勘違い
今秋田義光は死の床にあった。
病院のベッドで今にも死にそうな顔になっている、その周りを家族が泣きそうな顔でいる。
「折角大学生になったのに」
「まだ十九なのに」
「それでどうして」
「急に」
「あの、先生」
姉の有希子が同席している医師に問う。
「弟の病気は」
「それが今もです」
眼鏡をかけている医師は困った顔で答える。
「全くです」
「原因も何もですか」
「はい、わかりません」
そうだというのだ。
「何一つとしてです」
「そんな、ここまで痩せ衰えているのに」
「癌ではありません」
まずはこの病気が否定される、死といえばこの病気と言うのは偏見にしてもだ。
「何処も悪くはないのです」
「心臓もですか」
「全く異常はありません、そして伝染病でもありません」
これも否定される。
「それでもないです」
「そうなのですか」
「とにかく私達も原因がわかりません」
まさにお手上げといった顔だった。
「これは」
「そうですか」
「ではこのまま」
「はい、残念ですが」
こう言うしかなかった、医師にしても。そして。
義光自身もだ、諦めてこう言うのだった。
「もうすぐだね」
「おい、御前がそう言うのか」
父親が息子に言う、その彼に。
「諦めるのか?」
「だってさ、もう身体か力が抜けていってさ」
こう自分で言うのだった、消え入りそうな声で。
「声だって」
「だから諦めるな」
「まだ十九なのよ」
枕元に立っている母も言う。
「それでどうして」
「僕もそう思うよ、まだ十九だよ」
死ぬには早い、早過ぎるというのだ。
「わかってるんだよ、けれどね」
「無理か」
「駄目なのね」
「うん、もう終わりだよ」
頑張るだけの力もないというのだ、そうして。
彼は静かに目を閉じた、姉の知子は泣きそうな顔になりそれを見た。
彼は眠りに入ろうとする、その中で夢を見た。
闇の中から彼の前に誰かが来た、それは誰かというと。
黒いフードがついた丈の長い服を着ている、そのフードを頭から被っている。
顔は髑髏であり目がある、そして両手に大鎌を持っている。
その彼がだ、義光の前に来てこう言って来たのだ。
「今から行くか」
「貴方はまさか」
「そうさ、死神だよ」
義光に対してはっきりと答える。
「見てわかるよな」
「やっぱりそうですか」
「道案内するからな、閻魔さんのところに行くか」
「はい、それじゃあ」
「まああんたならそんなに悪い判決受けないから」
閻魔の裁きだ、まずこれがあるというのだ。
「見たところそんなに悪そうじゃないからな」
「そうですか、それは何よりです」
「悪い奴って
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