第四章
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「それでなのじゃ」
「相手の足を払う時も」
「他の者よりもひっついている分時間を長く払える」
そしてその分力を加えられるというのだ。
「それでなのじゃ」
「こうした技になるのですか」
「わしの場合はな」
「では先生の山嵐は」
「おそらくわし以外は無理じゃ」
西郷は坂上に対して言い切った、坂上は完全に起き上がり彼と向かい合っている。
「相手を脳天から落とすのはな」
「本当の山嵐はですか」
「そう思う」
「まさか山嵐にこうした秘密があるとは」
「わからなかったか」
「はい、何故技を仕掛けられた者が頭から落ちるのか」
彼がやるとただ投げるだけだ、しかしそれが違うからである。
「こうした秘密があったんですね」
「そうじゃ、若しこうした山嵐をしたければな」
そう思うとだというのだ。
「わしの様な足でなければならん」
「それがわかりました」
坂上は西郷の言葉に頷いた、そしてだった。
後は西郷と柔道の稽古や話をして長崎の街も巡ってから帰った、そのうえで師匠に対してそのことを話した。
その話を聞いてだ、師匠は目を閉じ考える顔になり言った。
「山嵐はそうした技だったか」
「はい、型はそれでよかったのですが」
「足だな」
「西郷さんの様な足でなければ駄目とのことです」
あれだけのタコ足でなければというのだ。
「実際に技をかけられてわかりました」
「そうか、ではだ」
ここまで聞いてだ、師匠は言った。
「山嵐は消えるな、あの人がいなくなると」
「型は残っていてもですね」
「あの人しか使えなければ消える」
そうなるというのだ。
「そうした技はな」
「そうなりますね」
「残念だが仕方がない」
師は坂上の前で腕を組み苦い顔で述べた。
「それもな」
「ではこの技は使わないでおくべきですか」
「そうでもない」
封印しなくともよいというのだ。
「型は残しておく」
「あの人しか使えなくてもですか」
「今はそうだが若しかしたら再び使える者が出るからも知れん」
だからだというのだ、師は坂上に話す。
「そうした足の持ち主がな」
「ではそれまでは」
「技は伝えよう。消えてもだ」
「何時か再び使える者が出るかも知れないからこそ」
「技は残しておこう、わし等も使い型は残しておくぞ」
「わかりました」
坂上は師匠の言葉に頷いた、そしてそれからも山嵐は使い続けた。
山嵐は西郷四郎が得意とした技として知られている、長い間消えた技と言われていたが型は残っていた、しかし柔道の正規の技からは長い間離れていた。
型は残り今も使える柔道家はいるにはいるがどれも完全な山嵐ではないという、西郷の他に使える者はいないという言葉はその通りになっている、しかし何時か西郷の様に完全に使える者
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