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困った天才
第二章

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「わからないから」
「彼女やるのも楽じゃないのね」
「とにかく」
「というかよく付き合ってるわね」
「それ自体が凄いわよ」
「マッドサイエンティストだけれどね」
 それでもだとだ、清子は友人達に言う。
「悪い人じゃないしね、私のことも」
「ああ、大好きよねあんたのこと」
「もう誰よりも」
「一途ではあるわね」
「ほら、一途に好かれるとね」
 愛されると言ってもいい、この場合は。
「どうしてもね」
「こっちもってなるわよね」
「そうなるわね」
「ええ、だからなのよ」
 愛されている、それ故にだというのだ。
「私もってなってるのよ」
「ううん、まさに愛こそってやつね」
「そういうことなのね」
「そうなの、まあ何とかね」
 今度は苦笑いで言う清子だった。
「やっていけてるわ」
「本当にやっとよね」
「何とかよね」
「今も何してるやら」 
 清子は首を捻ってこうも言った。
「考えるだけで怖いわ」
「今度はロボットかしら」
「そういうのかしらね」
「有り得るからね」
「清子ちゃん、出来たぞ!」
 女同士で話しているとだ、その瞬間にだった。
 教室の窓から高校生男子の声が聞こえて来た、そしてだった。
 清子がまさかと思ってその窓の外を見るとだ、背中にプロペラを背負ってそれで空を飛んでいる。
 そのうえで窓のところに来てだ、こう清子に言って来たのだ。
「見てくれ、これを!」
「えっ、それって」
「かつて怪人二十面相が使っていた小型プロペラだよ」
 それを作ったというのだ。
「どうだい、これは」
「ええと、何ていうか」
 一太郎は眼鏡に黒髪を綺麗に切った少年だ、背は小柄な方だ。この高校の制服である黒の詰襟の上に白衣を羽織っている、清子はその彼に戸惑いながら答えた。
「かなりびっくりしたけれど」
「今実験中なんだ」
 自分自身でそうしているというのだ。
「大丈夫だったら君も乗ってくれ」
「それでお空を飛ぶのね」
「うん、二人で空を飛ぼうよ」
 背中からのプロペラの凄まじい音の中言う。
「そうしよう」
「それはね」
 ちょっと、とだ。清子は一太郎に戸惑いながら返した。
「何ていうかね」
「駄目かな、空を飛べるんだよ」
「いや、駄目じゃないけれど」
 それでもだとだ、清子は言葉を選びながら答える。
「ちょっと答えは待ってね」
「うん、待つよ」
 一太郎は背中にプロペラを背負って空を飛びながら窓の高さでホバリングの中で両手を拳にして小さくガッツポーズをして述べた。
「君が僕と一緒に空を飛ぶのをね」
「気をつけてね」
 清子は精一杯の声で言った。
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