第十一章
[8]前話 [2]次話
「今日はこの格好でいくわ」
「礼服で行かれますか」
「そのお姿で」
「吸血鬼の話をしてたらこの格好で飛びたくなったわ」
だからだというのだ。
「それでよ。じゃあいいわね」
「ご主人様の思われるままに」
「そうされて下さい」
蝙蝠達は今は主の言葉に従うだけだった、そのうえで。
桃香は自分で部屋の窓を開けた、そして黄色い満月を見て楽しげな笑みを浮かべ宙に出た、そうして蝙蝠達を連れて夜空を飛んだ。
その次の日にだ、桃香は禎丞に大学のキャンバスの中でこう言ったのだった。
「今度の日曜私の家に来ない?」
「えっ、それってまさかな」
「そうよ、そのまさかよ」
くすりと笑っての言葉だった。
「私のお父さんとお母さんに紹介していいわよね」
「いいのかよ、本当に」
「来て、それであんたのお家にもね」
「ああ、来てくれるんだな」
「これだけは駄目なの」
ふとこんなことも漏らした。
「人のお家には一回読んでもらわないと入られないのよ」
「あれっ、何かそれってな」
「吸血鬼みたいっていうのね」
「それまさか」
「違うわよ、入られるけれど抵抗があるのよ」
精神的にというのだ、これは本当のことだ。
「どうしてもね」
「結構シャイなんだな」
「そうかもね、自分ではシャイとか思わないけれど」
首を少し左に捻って述べる。
「私はね」
「じゃあまずは俺がそっちの家に行ってか」
「それで私があんたの家に行ってね」
「そうするか」
「ええ、それじゃあね」
「今度の日曜何処で待ち合わせしようか」
「通天閣の下でどう?」
桃香が言った待ち合わせの候補地はそこだった。
「そこでね」
「あそか、まさかその足で串カツ食いに行くとかはないよな」
「ちゃんとお料理用意しておくから」
「大蒜使ったのだよな」
「パエリアね。それでいいわよね」
「ああ、楽しみにしてるよ」
禎丞もパエリアと聞いて笑顔で返す。
「それそっちの親父さんとお袋さんと一緒にな」
「食べましょう」
「ああ、それにしてもパエリアだとな」
「トマトも入れてね」
「あと大蒜もだよな」
「絶対に欠かさないわよ」
禎丞に笑顔で応える、桃香にとってこの二つはそうしたものだった。
「この二つがないとパエリアじゃないでしょ」
「それパスタとかの時も言うよな」
「イタリアとかスペインの料理の時はね」
絶対にだというのだ、やはり。
「そうするわよ」
「そうか、じゃあ楽しみにしておくな」
「そうしておいてね」
サングラスをかけたままだが禎丞に笑顔を向けて言う、だがここで。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ