第四章
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「紅の薔薇を買うって」
「だってよ、白いスーツだぜ」
「しかも髪も丁寧にセットしてな」
いつもとはまた違っていた、上にしている髪は整髪料で綺麗に固められている。髭も丹念に剃られ爪も切られている。
そこまで観てだ、彼等は言うのだ。
「そうなると薔薇だろ」
「しかも紅だろ」
「靴まで綺麗に磨いてな」
「殆ど車田正美さんじゃねえか」
漢の漫画家だ、そのファッションは今の匡の様に白いスーツであることが多いのだ。
「というか完全に勝負のつもりだな」
「それで告白するか」
「御前完全に本気だな」
「勝負するんだな」
「だからこの服なんだよ」
また言う匡だった。
「振られてもいいからな」
「よし、じゃあな」
「頑張れよ」
友人達はその彼の背を押した、そして実際にだった。
匡はまずは花屋で紅の薔薇の花束を買った、そのうえで決戦の場に赴く。
友人達はその彼を囲んでいる、それでこう言うのだった。今彼等は百貨店に行く道を匡を囲んで歩いている。
「武器は買ったな」
「薔薇な」
「まさに必殺の武器だな」
「これが武蔵のあれだよ」
佐々木小次郎との勝負の時に使ったあの木刀だというのだ。
「これであの人を打つぜ」
「それで勝つか」
「そう言うんだな」
「ああ、そうだよ」
その通りだというのだ。
「絶対にやるからな」
「それで場所は何処なんだ?」
仲間の一人が彼に告白する場所のことを尋ねた、彼等は今丁度花屋から百貨店に入ろうとしているところだ。
「何処でコクるんだよ」
「それか」
「ああ、まさかエスカレーターですれ違う時じゃないよな」
「そんな告白あるかよ」
匡自身もこう返す。
「すれ違いざまに好きです、とか言う奴がいるかよ」
「まあいないな」
「どうやってこれを渡すんだよ」
両手に剣を抱く様に言う薔薇を見せながらその彼に問う。
「それでな」
「やっぱりそうだよな」
「当たり前だろ、だからコクる場所はな」
「それで何処なんだよ」
「エスカレーターの前だよ」
そこでだというのだ。
「あの人が降りた時だよ」
「その時にコクるのかよ」
「そうするつもりだよ」
こう言うのである。
「それだとコクりやすいしな」
「周りに人滅茶苦茶いないか?そこだとな」
別の友人がこう突っ込みを入れた。
「相手も迷惑じゃないか?」
「そういえばそうだな」
「その人がこの百貨店で務めてたら働きにくいだろ」
「じゃあどうしろっていうんだよ」
「別の場所にしろ」
エスカレーターから降りたところではなく、というのだ。
「そうだな、ここで声をかけたらどうだ?」
「ここか」
「ああ、ここでな」
百貨店の入口だ、そこでどうだというのだ。
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