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犬のお巡りさん
第一章

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                     犬のお巡りさん
 動物達の町の交番には犬のお巡りさんがいます。秋田犬のお巡りさんです。
 とても真面目で働き者のお巡りさんなので皆から慕われています。
 頼まれたことは何でもしてくれる、とても立派なお巡りさんです。
 そのお巡りさんのところにある日です。
 いつもお巡りさんを慕っている穴熊の子供達が来てこう言ってきました。
「ねえお巡りさんいい?」
「ちょっとお願いがあるんだけれど」
「うん、何かな」
 お巡りさんは子供達に顔を向けて尋ねます。丁度交番の前でしゃきっとした姿勢で立っているところでした。
「困ったことがあったのかな」
「迷子なんだ」
「迷子の子を見つけたんだ」
「迷子?この町のかな」
「それがわからないんだ」
「何を聞いても答えてくれないんだ」
「ふうん、そうなんだ」
 お巡りさんは子供達の話を聞いて首を傾げさせました。
「それだと」
「お巡りさん見つけられる?その子のお母さんかお家」
「それできるかな」
「まずはその子を連れて来てくれるかな」
 お巡りさんは子供達に言いました。
「そうしてくれる?」
「ここに連れて来てるよ」
「この子だよ」
 子供達はお巡りさんの前にその子を連れて来ました。
 見れば女の子のスカートを穿いた白い子猫です。両手を前足で覆って泣いています。
「何聞いても泣いてるだけでね」
「本当に何もわからないんだ」
「ああ、この子がなんだ」
「お巡りさんこの子のお家わかる?」
「それかお母さんか」
「そうだね、ねえ」
 お巡りさんは子猫ちゃんに尋ねました。
「君お家何処かな」
「わからないの」
 子猫ちゃんはこう言って泣きます。
「それがなの」
「じゃあお母さんは?」
「わからないの」
 やっぱりこう答えます。
「全然。ここ何処なの?」
「ううん、本当に何もわからないんだね」
「そうなんだよ。まだ三つ位みたいだし」
「何もわからないみたいなんだ」
 子供達もお巡りさんにまた言いました。
「どうしたらいいかな、この子」
「見つけられる?」
「ちょっと待ってね」
 お巡りさんは子供達に返して子猫ちゃんの傍に来ました、そのうえで。
 鼻をくんくんとさせました、それから町全体を嗅いでそして言いました。
「ああ、こっちかな」
「こっち?」
「こっちって?」
「ちょっとこの子の面倒を見てくれるかな」
 お巡りさんは交番の右手の道の方を見ながら子供達にお願いします。その道は左右に色々なお店が立ち並んで一直線に続いています。
「この子のお家の方角がわかったから」
「えっ、わかったの?」
「そうなの?」
「うん、後はね」
 今も鼻をくんくんとさせています。
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