暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第五十九話
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寄せていた。

「……あれ?」

 手早く受付を済まして学校内に入ると、暖房がちょうど良い具合になっていたため、着ていた黒いコートを脱いでカバンに入れておく。今日は学校見学のようなもので、施設内を自由に見学して良いそうだ。

「ちょ、ちょっとそこの人! 待って!」

 以前に菊岡さんに聞いた時は、胡散臭い学校だと思っていたが、特に他の学校との差違は感じられなう。あの人から聞くと、大体胡散臭く聞こえてしまうが、廃校とは思えないぐらい整備は整っている。

「だから……この……」

 ……しかし部活とかそういうことをやるのは難しい、と言わざるを得ないが、そこは無理を承知で期待しておこう。……まあ、ここに来るのは大体ネットゲーマーかお金持ちなので、そこのところは望み薄――

「……待ちなさいってば!」

 突如としてそんな声とともに、背後から見事なカーブを描きながら人が出て来て、息を切らしながらその『少女』が俺の進路を塞いだ。……そろそろ意地悪を止めておこう、『彼女』を見た時、ついついやってしまったけれど。

「……あんた、ねぇ……絶対、気づいてた、でしょ……」

 走ってきて息も絶え絶え、といった様子で喋る茶髪の少女が、顔を上げて俺へと顔を見せた。少し童顔と言える顔、頬に少しあるそばかす、ショートカット……と、髪の色以外は、俺の記憶にある姿と瓜二つだった。

「……久しぶり、リズ。それと始めまして、一条 翔希だ」

「むう……」

 これじゃ怒るに怒れない、それは卑怯だなどと呟きながら、リズは若干その目に涙を貯めながらも、向日葵のような笑顔で応じてくれた。

「篠崎 里香よ……ショウキ。また逢えて、嬉しい」


 自己紹介も終わり、積もる話は山ほどある――リズ談――とのことで、俺たちは学校に備え付けられた食堂へと移動していた。俺たちの他にも、まばらだったが人はおり、俺たちは中庭が見える窓際の席へと座った。

 俺は握り飯と、リズはサンドイッチをカウンターで注目すると、リズは腕組みをしながらこちらを問い詰めた。

「……色々と言いたいことはあるんだけど」

「はい、出来心でしたすいません」

 この食堂に来るまでに、リズには先程のイタズラをしこたま怒られてしまい、もう一度深々っ謝ると、リズから「よろしい」と声をかけられた。

「それで結局あの時、最期に何が――」

「その話はここでは無しだ」

 このSAO生還者たちの学校において、アインクラッドの最期の話をする訳にはいかないだろう。あの世界でのトラウマや、帰ってきた現実を克服出来ていないのは――俺も含めて――ここにはいるはずだ。

 迂闊にアインクラッドの話をしてはいけない、と思った俺はリズの口に彼女が注文したサンドイッチ
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