暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ―亜流の剣士―
Episode2 7層迷宮区
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「はぁ、めんどくさい…、あっ」

迷宮区の薄暗さの中、つい漏れてしまった本音に慌てて口をふさいだ。それでも出て行った言葉が返って来るわけもなく俺の弱音を聞いたアカリと視線がぶつかる。5秒ほど沈黙を続けた彼女は疑問の色を映していた瞳を瞬かせ小首を傾げた。

どう弁明したものかと考えている俺の目線の先でささやかな光が発生し、モンスターの湧出演出が始まってしまった。

「げっ、なんかポップ率高いなぁ」

毒づきながらソードスキルの発動体勢に入った俺に微笑みを浮かべたアカリから声がかかる。

「えへへっ、頑張りましょうっ!もうちょっとで7階ですよっ!」

階じゃなくて層なんだけどなぁ、などと落ち着いて考えてしまった自分に苦笑しつつ、《レイジスパイク》の開始に伴うシステムアシストで俺は迷宮区の石畳を蹴った。



――
―――


俺は説明が下手だ。と言うより体験したことを人に伝えるのが苦手だ。現実でも友達によく「お前の説明分かりにくいし」と言われたものだ。だから、シスイに求められた説明もうまくは出来なかった。
キリトのように対話みたいな感じでの説明ならなんとかなるものの、シスイのようにジッと聴き入られるとどうしても言葉がたどたどしくなる。それでも精一杯伝えた。……その結果がこれだ。

「ぷふっ、カイトぉ、あんたなぁ…、説明ヘタ過ぎやわ〜!あかんっ、ツボやわぁ…くくくっ」

身体をくの字に折り曲げ、まるで痙攣のように震えながらシスイが笑いを堪えている。…いや、これはいっそ笑ってくれた方がいい。シスイの横では困ったようにキリトが頭を掻いているし、アカリに至っては何がなんだかといった様子だ。

「そんな笑わなくてもいいだろ!」
「やっ、あはは、これはセーフ!セーフやから、うん…ぶふっ」

何がセーフなのか不明。爆笑中のシスイがメガネを外して目元に溜まった涙を拭ったところでキリトが口を開いた。

「まぁ、あれだ。説明がヘタなのは確かなんだけど、話はさっきのも含めてよく分かったよ。それに、本当はこんなふうに判断すべきじゃないんだろうけど…あんたは悪いことが出来そうにない」
「お、おう。ありがと」


話を分かってくれたらしいキリトの横でメガネをかけ直したシスイが爆笑の余韻を残した顔で俺を見た。口の端が未だにヒクヒク動いているのは気のせいではないだろう。

「ウ、ウチだってちゃんと分かったで。…ただ、あんまりカイトの言葉の間に『でさ』、とか『それで』が入ってたから途中からそれ数えてたら面白くて…あかんっ、思い出したらまた…」

フグッ、と言いながら口元を押さえたシスイを笑い上戸だと断定した。そんなことを思われているとは知らないだろうシスイは大きく深呼吸を2、3度繰り返して呼吸を落ち着けた。
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