第十一話 〜殿〜
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が大変なのだ。
我々蕃族は形はどうであれ、再び北の大国"零"と戦をしなければいけないのだ。
幸い13年の平和な月日の中で国の内需は整った。
軍備だってしっかりと有事に備えて蓄えてきた。
兵も屈強。
あとは、私達がどれだけ勇戦できるかにこの国の存亡がかかっている。
もう、豪統殿のような変わり者は今後数百年この国には現れないだろう。
だが、だからこそ彼が残してくれたこの機会を生かして私達は自らの血を誇り、蕃族の地位を盤石にしなければいけない。
もう他国には頼れない。
私達は私達の道を進まなければいけない。
『皆の者!良く聞け!』
私は緩みきった空気の中で一際喝を込めた声で辺りへ叫んだ。
それによって兵は皆異質な雰囲気を察して再び静まり返る。
『これより晏城へと戻り、これからの北国との大戦に備え、守りを固める!』
大戦。
そうだ。
これから再び北との長い戦の日々が始まるのだ。
『平和は終わった!もう一度言う!平和は終わったのだ!』
もう偶然の平和は訪れない。
だからこそ、今度は私達で万年の平和を作るのだ。
『皆、再び気を引き締めよ!』
『オーッ!』
屈強な男達の雄叫び。
しかし、その雄叫びはどこかさみし気に、そして悲し気に私には聞こえた。
そんな雄叫びに包まれた村跡地でただ一人夜空を眺めた。
だが、その空は既に夜空というには不十分な程に明るさを取り戻しつつあった。
夜が終わる。
平和と共に。
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