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〜烈戦記〜
第十一話 〜殿〜
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り方をしようと自分に言い聞かせた。


そして、感慨に浸るもそこそこに私は彼がその命を持って残した意味仕上げの為に瞳を開いた。



『他に我に挑む者はあるか!』

私はいつの間にか敵味方共に静まり返っていた戦場で声を張り上げた。
そしてその声に皆一様に時間が動き出したかのようにざわめき始めた。
既に決着は着いていた。
だが、幕引きこそしっかりやらねば、きっと今この瞬間に起きた出来事に水を指しかねない。
私は敵側に戦意が無いことをしっかりと味方や敵自身に確認させた。

『引くぞ!』

そして私は終えた戦場からの撤退命令を味方へ出した。
しかし、味方方も味方方で敵味方わからない程に入り乱れた戦場の中、ついさっきまで目の前で命のやり取りをしていた相手を前に堂々と背を向けて引くことへの抵抗があるのか、とても困惑したような表情を皆がしていた。

しかし、それを見て私は直様馬を返し、ただ一人自国領側の村の出口へ馬を歩かせた。
すると、皆一様に慌てたようにゾロゾロと撤退を始めた。
それを確認して私は心の中で安堵した。

"今回の戦も生き残れたか"と。



『待て!』

だが、現実はそうあっさりとは終わらせてくれないようだ。

『…』

私は馬を返さずに後ろ目で声の主を見据えた。

そしてその声の主は、あの豪帯様を探している時に出くわした牌豹と名乗る敵の若武者だった。
しかし、その彼は俯いているのか顔に影がかかっていて、表情が見えない。

『…』

だが、彼と対峙した時の状況や味方の将を討ち取られて呼び止める辺り、怒りやそれに似た感情を私に抱いているのは安易に想像できた。
そして、今にも斬りかかってきそうな程のその殺気に今討ち取った将との関係も推測できる。
多分歳からして師弟の関係か。

"その歳で自分の師を討たれるのはさぞ辛かろうに"

同情。
だがそれも一瞬だ。
ここは戦場。
敵として出会えばたとえそれが友であっても斬るが習わし。
そして、師の仇討であるならば自らの力を持って仇を討つのもまた習わし。

"ではどうする?
今この場で私に挑むか?"

私は薙刀を握る右手に再び覚悟を籠めた。


『…次は…』

だが、彼の口から出たのは"次"という言葉だった。
そして俯いて影になっていたその顔から雫が地面に零れ落ちた。



『次は…負けない…ッ!今度…ッ!今度出会ったその時、貴様のその首貰い受ける!』

彼はそれを川切りにここが戦場であるにも関わらず赤児の様に目を真っ赤にしながら涙を流し始めた。
その姿に周りの敵味方の兵達は皆呆気にとられていた。


"戦場で男児が涙とは…"

私の初めの印象もそれだった。
その涙ながらの
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