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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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 その加減を間違えたのだ。ただ目を背けていただけなのに線を引いた気になっていい気になってしまった。

「一度も疑問に思わなかったのか。常識で考えろクソガキ。ガキがガキ引き取るのを認めた時点でおかしいと思わなかったのかよ。仕事の真似させたことは? 子供二人残して家開けまくることは? 何度も何度も数日に渡る泊まり許したことは? それ全部当然だとでも思ってたのかよ。反応見てたんだよ馬鹿が。距離を取って見たらおかしい所がどんどん出てくる。知識判断行動、全部歪だ。親バカ夫婦は親バカで分からなかったかもしれんが、ただの化物だろうが」

 年相応の行い、というものがある。周辺環境、教育、知識量、才能。多岐に渡り、絶対の基準となるものは存在しないが、それでも大体の目安というものがある。
 子供ならば夢を語るだろう。スレたことを言うかもしれない。己の傲慢さを理解せず、世の中を馬鹿にするかもしれない。親が死ねば変に現実的で潔癖な人間に急変するかもしれない。だがそれでも理解できる範疇の事だ。

 たまに正論を吐き、たまにスレ、理想を夢見ながら現実を語る。大人の言うことに歯向かうでもなく妥協し、自分との妥協点を図り、それを当然として行動する。それはある程度の社会に触れた後に形成されるべき人格だ。幼い子供が持っていいものではない。
 目の前の男はそれを見咎めたのだ。そして試し、観察した。
 自分の子供だという前提で見た夫婦と違い、あくまでも伝聞でしか知らなかった男は、少し離れた場所から見ることができた。

 言われてみれば確かに馬鹿な話だ。白を連れて行くことを許された時、俺はおっさんを「意外と心が広いな。見直した」などと思っていたが逆だ。見方を見直されていたのは俺の方だった。
 言われてから考えればひどく当たり前の事でしかない。

「最初に言ったようにお前の中身はどうでもいい。お前がどんな目的を持っていて、これから何をする予定なのか。それを教えろ」
「それを話して、何の意味があるんですか。目的は」
「ずっと前にお前に言ったはずだ。死ぬのは御免だってよぉ。何もなけりゃ見過ごすつもりだったがお前は外で殺しをするし、逆らう者は殺すらしいガトーカンパニーも関わってきやがる。はっきりさせなけりゃオレの身が危ないだろうが」

 向けられた酷く独善的な言葉に、けれど俺はどこか安堵する。自分と同じ保身的な理由だからだ。理解できるからこそ現状の自分の身の危険も一層わかる。だけど同じ人間がいることで自分はおかしくないのだと保証された気がする。
 病人に対するご丁寧な説明で自分の身の置かれた状況はわかった。混乱も収まり頭も多少は回るようになってきた。

「それでこれ、ですか」
「おうよ。変に口出せば相手は殺しやる奴だ、もしもがあっても困る。ガトーカンパニー
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