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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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らの願いの合致。誓ったのだ。その願いを全うしてみせようと。「依月」を生かすのだと。

 何があろうと。誰を利用しようと――殺そうと。
 絶対に生きるのだと。

 そうしてあの日、男は自分の中に己の手で卵を植え付けてしまった。
 「依月」という、ずっと昔からあった罪悪感の卵。その横に夫婦との誓いの卵を。
 頭の中でキィキィとなく、蟲の卵を。

 それは度々鳴いた。命を守るために使う原作。それに関わる度に。「依月」の度を越えるなと。
 それは度々泣いた。「依月」はそんな事をしないと。誰かを傷つけ、殺すたびに。その名と体を汚してくれるなと。
 音は痛みとなり声となった。男が勝手に抱いた、自業自得の幻聴にして幻痛。

 自分のためじゃない。「依月」の為だと言い訳をして殺した。自分の意志でそれをするなんて、耐え切れなかったから。けれど自分の判断でそれをしているのだろうと絶えず蟲は責めた。
 気づけば、そんな自分を俯瞰するような視点で見ることができていた。後で知ったが、幼少期からの精神的苦痛は人格の分裂を生んだり第三視点で見たりするようになるらしい。辛い現実を認められず、それは自分ではないのだと、痛みを押し付ける変わり身を作る精神的逃避だ。

 現状を認めたくなく、まるでゲームのように捉えもした。自分の体を俯瞰し、ゲームのように。キャラクターをコントローラーで動かすように、感情を殺して、そんなもの感じる必要などないと思い込もうとして。
 経験値だ、レベルアップだと、ゲームだと思おうとして。
 騙して、騙して、騙して。

 そして、とうとう倒れたのだ。








 最初に見えたのは白く霞む視界。最初に感じたのは額に乗る冷たい感触。どうやら布団に寝かせられているらしい。
 段々と鮮明になっていく視界と戻ってくる感覚。体は酷く熱く、怠く動ける気などしない。
 鈍い頭を動かし、ああ、俺は夢を見ていたのかと気づく。始まって終わって、そしてもう一度始まった日の。気づかなければよかった、罪の意識を背負った日の夢を。

 馬鹿な話だ。この世界に生まれ変わることを、夫婦の息子として生まれることを選んだのは自分の意志ではない。気づいたらいつの間にかその場に収まっていただけであり、抗える類のものでもない。自身に咎はなくそれは押し付けられたものでしかない。だというのに勝手に悩んで勝手に罪だと思ってしまった。それは自分が満足するための誰も救われない偽善で、どうしようもない自己満足だ。自分から進んで重荷を背負って悲鳴を上げているただのキチガイ、なのだろう。

 二度目の生はとても甘美な誘いで、知らぬうちに死んだ身としてもう死にたくはなかった。けれど奪った身でそんな勝手なことを言えるのかと思い、夫婦の願いを利用した。彼らの願
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