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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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てのをいくつか目処つけてある。あんまりいてそっちのに殺す算段付けられても困るしな」

 言われた白は下らないものを見るような目でおっさんを見る。

「イツキさん、僕は反対です。そいつとこのまま暮らすのは危険です」
「出てってどうする。誰かの家にでも泊めてもらうか? 俺の体調を考えれば受け入れられるはずがないし、追求も怖い。何かすれば今度こそ向こうだって死ぬってわかってる。目的も終わったんだからそんな事しないはずだ」
「目的ってそもそも何ですか?」
「後で話してやるよ」

 適当に白を宥める。
 立ち上がったおっさんは腕に刺さっている千本を抜く。血に濡れたそれをこちらに返すでもなく仕舞い、折れた指は無理矢理に形だけ整える。

「で、そっちはどうするつもりだ」
「木の葉に行きます」
「……へぇ」

 面白そうにおっさんが俺を見る。何も言ってこないが白もどういうことなのかと俺を見る。
 大したことじゃないと思いつつ、俺は続きを言う。

「おっさんと同じように準備して、準備が終わり次第ですかね。理由は必要ですか?」
「爆心地、だったっけか。それだろ。好きにしろ。そんな場所にオレは一切近寄らんがな」
「ええ、好きにします。これからも俺は好きに生きていきますよ」

 開き直った言葉を言う俺に、それでいい、とばかりにおっさんは口端を曲げる。
 実際のところ楽になっただけでそこまで開き直れたわけではない。まだ迷いはある。だがそれでも、間違いでと言われたこの行動を俺は貫くしかない。これ以上は俺が自分でケジメを付けるものだ。軽口を言うだけの余裕は出来たから十分だ。

 おっさんが動く。反応した白を出来るだけ刺激させないようにゆっくりと動きながらおっさんは家の出口に向かう。

「警戒すんな、傷を見て貰ってくるだけだ。どうせ遅くなるからお前らは先に寝てろ」
「お前に言われる筋合いはない。さっさと行け」
「怖い怖い。ホント嫌われたなぉい。まぁどうでもいいか」

 玄関の扉が締まって少しすると白の警戒は止まった。白は心配そうな顔を浮かべ俺の手と首の傷を見る。
 大したことないと俺は言うが白は無視して手当をしていく。手当が終わり包帯が巻かれた手とガーゼを当てられた首の違和感に何度も首を撫でてしまう。

「余り触らないほうがいいですよ」
「ああ、すまん。つい」
 
 ひんやりとした白の手が俺の額に触れる。
 倒れた精神的原因はあらかた無くなっていたが、肉体的原因はそうすぐ消えるものではない。必要なのは休息と栄養だ。気が抜けた事もあるだろう。自覚すると改めて気だるさが襲ってくる。

「まだ熱が残っています。寝たほうがいいですよ」
「ああうん、そうだな」
「えと、平気ですか?」
「ああうん、そうだな」

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